駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

ゴーゴリの『鼻/外套/査察官』を読みました。

『鼻/外套/査察官』 ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ 浦雅春・訳 光文社古典新訳文庫
 
ゴーゴリについて何も知らずに、「聞いたことあるから」というだけで選びました。
本当に古典知識が全くありません(^^ゞ
「おお、またもロシア文学」とそこで初めて知るくらい無知状態から、読み始めました(笑)
 
「鼻」を読み始めますと、いきなり変わった口語調でちょっと面食らう。
しかしそれ以上に突飛なストーリーに、さらに面食らってしまうのです。
でもどこか馴染みのある雰囲気…と言うことではっと気づく。
これは落語調で語ってるんだ。
理髪師の主人公が朝食を食べてると、パンの中から人間の鼻が出てくるところからはじまるのだけど、
別のところでは鼻をなくした八等官が、見栄とプライド最優先で鼻の件で頭を抱える。
しかもその鼻自身は外套を着て偉そうに街中を歩いているじゃないか、っといった具合。
もう突飛過ぎて展開についていけなくなりそうですが、
それがこの落語調だと「あー、はいはい」と思えてきてしまうのです。
なんか「頭山」とか思いだしちゃってね。
オチらしいオチもない気がするのですが、冒頭からインパクト大なので、オチはどうでもよくなりました(笑)
 
だけどその次の「外套」の落語調は、個人的には好みでなかったかな。
ストーリーが好みだっただけに、落語調のおどけた感じが、
ユーモアでありながらも哀愁を漂わせるこの話にそぐわなかったように感じました。
貧しい小役人が着古した外套を、やっとの思いで新調することになり、有頂天になっているところで
その外套を奪われてしまう…という話。
それまでなんの起伏もなく淡々と過ごしてきた小役人が、外套の新調を境にがらりと変わる様子が、
痛々しいながらも非常に人間味あって興味を惹かれました。
最後のオチも悲劇的でありつつ、なんとなくしょうがないなぁと笑ってしまう不思議な読後感。
この本の中では一番好きな話でした。
 
そして戯曲「査察官」。
これを読む前に三谷さんの「清須会議」を面白く読んだんですけど、
それとはまた種類が違う笑いなんですよね。
面白いことを言って笑わせようとするのではなく、当人たちあくまで真剣なのに、
なぜか見てる人たちは笑えてしまうというタイプの話。
後ろ暗いところがありまくりの町の有力者たちが、国から査察官が派遣されてくるという噂に怯えてるところに、
どうも査察官とおぼしき人物を発見して、揉み手で近寄る。
しかしその人は査察官などではなく実はとんでもない人物で…というお話。
出てくる人たちみんな真剣で真面目にやっているんです。
でもその保身っぷりや小心者っぷりや、歯車のずれが皮肉な笑いをもたらすんです。
だけどよく考えてみると、現実社会でも同じようなことが行われてるんだよなーと言うことに気づいて、
笑いが固まるんですよね…。ほんと笑ってる場合じゃないんですよね(-_-)
そんな皮肉に満ちた作品でした。(当人は皮肉のつもりで書いたのではないそうですが)
 
ロシア文学を数冊程度ですが読んでみて、なんとなくロシア文学がぼんやりと感じれるようになってきました。
やっぱお国柄ってあるんですね。
今まで海外作品ってあまり手をつけてこなかったのですが、
こういう国の違いを感じる楽しさも少し分かってきたように思います。
 
光文社シリーズは本当に読みやすくて、どんな作品でもいけてしまうわ。
古典を愛する人にとっては、このシリーズの新しい文体は賛否両論あるかと思いますが、
私はこの読みやすさを本当に重宝してます。