駄文徒然日記

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『サブマリン』 伊坂幸太郎

「チルドレン」の続編。「チルドレン」の再読を終えて、こちらの新作を読みました。

「サブマリン」というタイトル。
海面下で色々あるけれど、表面にはなかなか現れないもの、ということでしょうか。
表面に表れない、犯罪未満の危険だったり、匿名のネット社会のようなものを指しているのかな。
逆に、表面が前科者の、その内面とか。
上辺だけじゃなく、その中に隠れているものとどう付き合っていくか、っていうのが今回のテーマかな?

「死神の精度」の続編を読んだ時の感じ、再びでした。
続編だけど、続編じゃない。
死神も軽めの短編から、続編では重い題材を扱った長編でしたものね。
前作で活躍した陣内さんや永瀬さんは相変わらずで素敵なんですが、作品の雰囲気は変わっていました。
死神同様、ずいぶん重くなっちゃいましたね。

少年犯罪、無免許運転の未成年が小学生の列に突っ込んだ事件は実際にありましたよね。
それをきっかけに書かれたのかな?
最近の伊坂さんのテーマは「やりきれなさ」なんでしょうかね?
最近のは辛い話が多いなぁ…(>_<)
特に私が最近、初期作品と交互に読んでるから、その違いが本当に顕著で。
以前は純粋なエンタメ作品でしたけど、最近のは題材が重い。そして答えがない。
でももやもやしつつも、伊坂マジックなのか、物語はきちんと終わるので、読後感は悪くないんですよね(^^ゞ
なんか騙されてる気も!?(笑)
今回も、やりきれない少年犯罪にもやもやさせられました。
でも陣内さんがいてくれて、最後はちょっとすっきりでした。(なんかちょっと大人になってましたね、陣内さん)

少し話がずれますが、テレビ番組の「ガイアの夜明け」で、
「1回失敗して再起した人の方が黒字になるスピードが早いというデータがある」と言っていました。
しかし一度倒産すると、次回の資金調達が非常に困難であるそうです。
再チャレンジが難しい社会なんですよね。
犯罪も同じことが言えるのかもと思いました。
もちろん死人を出した事件なんかと同等に並べられませんが、
犯罪という失敗を犯した人は、それを機にすごく反省するだろうし、いろんなことを学ぶでしょう。
失敗を犯してない人より慎重にもなるはずです。
なのに再犯が少なくないという。それは再チャレンジの場が奪われてしまってるというものあるかもしれません。一度犯罪を犯すと、世間からそういうレッテルが張られてしまいますから、
やり直しがききにくいのかもしれません。
伊坂さんもこれまでの作品でよく書かれてますが、
今の社会は正義を振りかざしすぎるきらいがある気がします。
不祥事一つに世間やメディアが寄ってたかって叩くのは、今や日常茶飯事。
過失を犯した当人を叩くことは、臭いものに蓋する程度の効果で、
メリットはそれほどないように思えるんですけどね。
今は、失敗が本当に許されない世の中なんだと思います。

というわけで、今作の悩める少年たち。
彼らの過失が想像以上で、読み手としてもどこに気持ちを持っていけばいいのか悩ましい話でした。
少年犯罪は、未成年はやり直しがきくからということで、
成人の犯罪に比べ厳罰に処されないようになっています。
未熟ゆえの配慮も必要だろうし、しかし被害者としては納得のいかない部分もあり、難しい問題だと思います。
そこをひらりひらりと非常識男の陣内さんが、いい感じでひっかきまわしてくれるんですよね。
現実にはどうしようもないやるせない話も、フィクションだと上手に落とし前を付けられるんですよね。
なんかそこにほっとさせられました。
都合よすぎるオチだとしても、こんなやりきれない話には救いはほしいもの。
だから、この答えのない少年犯罪を、この飄々とした「チルドレン」の舞台で描いたのかな、と思えました。

前作の鴨居君がいないのがちょっと心配。友人を亡くしたような描写があったけど、そういうことなの!?
そこら辺が気になるし、まだまだ陣内さんの活躍を見たいので、続編ぜひまた書いてほしいなぁ。