駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『幹事のアッコちゃん』 柚木麻子

またまた柚木さんの本です。
実は二作目がイマイチだったので、もう追いかけるの辞めようかなと思ってたんですが、
今作はとうとう全編アッコさんが出てくるお話だと知って、読むことにしました!

読んでよかったです。
今までのとは少し趣を変えていて、それもよかった。
自分の道を突き進むかのように見えたアッコさんにもちゃんと内省するところがあって、
去話からは今のアッコさんを作るパーツが見えてきたようで面白かったです。
三智子の成長が、これまたびっくりするほどすごい。アッコさん効果はここまで影響を及ぼすのか…?
(いや、三智子自身がすごいのだ。私には無理だ!)

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
背中をバシッと叩いて導いてくれる、アッコさん節、次々とサク裂!妙に冷めている男性新入社員に、忘年会プロデュースの極意を…(「幹事のアッコちゃん」)。敵意をもってやって来た取材記者に、前向きに仕事に取り組む姿を見せ…(「アンチ・アッコちゃん」)。時間の使い方が下手な“永遠の部下”澤田三智子を、平日の習い事に強制参加させて…(「ケイコのアッコちゃん」)。スパイス絶妙のアドバイスで3人は変わるのか?そして「祭りとアッコちゃん」ではアッコ女史にも一大転機が!?突破の大人気シリーズ第3弾。

四つのお話があるのですが、それがどれも違う趣きのお話なんですよね。
三作目にして、さらに大きく広がった、そのバリエーションがすごい。

「幹事のアッコちゃん 」は、今までのパターン。
主人公が男性になったのが目新しくて、このさとり世代っぷりがなかなか難儀で面白かったです。
実際、部下にいたら苦労しそうですけどね…(^_^;)

「アンチ・アッコちゃん」、アッコさん否定派が現れたかと思ったら、アッコさんは風邪でダウン。
そんな弱ったアッコさんは、なぜかやすやすと相手に自分の中へ踏み込ませていくのです…。
(それも作戦の内?)
ここでは昔のアッコさんが垣間見え、今のアッコさんを形作る礎に様なものが見えてきます。
赤井さんのアッコさん式解決策の失敗談が面白かったです。
ファンタジーのような理想の話を書きながら、こんな風に、そうそうすんなりうまくいくもんじゃない、
ってのをさらっと交えちゃう感覚が毒っぽくて、いかにも柚木さんな感じがしました(笑)

「ケイコのアッコちゃん」では、これまで上からな物言いをしがちなアッコさんが、
誰かの下につくという立場が逆転した様子が見られます。
でも子供の下についたって、アッコさんはアッコさんで変わりなくて、そこがいいなーと思ったのでした。
アッコさんはお節介から人を強引に引っ張り込むところがあるから、立場が上からに見えがちだったんだけど、
これを読むと、アッコさんはアッコさんの信じる道をただまっすぐ行ってるだけ、というのがよくわかります。
だって教わる姿勢もまっすぐなんですもん。

「祭りとアッコちゃん」、なんとここでは同士だと思ってた三智子とアッコさんの立場が、対立してしまいます。
だけど対立が起こった時に、それを決めるのは勝敗だけじゃなく、ウィンウィンという解決法もあるわけですね。
社会で働いていれば、仕事に私情は挟めないし、意に添わない仕事もあったりで、
そんな時は、自分を曲げたり抑え込んだりしなければいけないような気がしていました。
でもその問題を丁寧に洗い出せば、両者が納得できる道もあるんだ、
となんか希望のようなものを感じましたよ。
M&Aなんて言葉が飛び交うシビアな現場では、自分を殺してこその仕事、みたいな感覚があったからかな?
現実的か否かはおいておいて、こういう理想はちゃんと持っておくべきだよなー。

と、どのお話もとても面白く読みました。
ただこうやって三冊も読んできて、特に今回これだけアッコさんのいろんな面が描かれたにも関わらず、
なぜか私の中でアッコさん像が固まりません…。
アッコさんというだけであの「和田さん」を想像してしまうからいけないのかなぁ(^^ゞ
でも面白く読みました!
今作で完結してもおかしくない雰囲気だったけど、まだ続くのかなぁ?どうなんだろう?
まだまだ続きを読みたいシリーズです。