駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『ホテルジューシー』 坂木司

こちらは先日読んだ「シンデレラ・ティース」と対になった本です。
「シンデレラ・ティース」で少し出ていた、姉御肌っぽい女の子が主人公で、
「シンデレラ・ティース」とは物語的にも少し雰囲気を変えたお話でした。
沖縄が舞台なんですが、私自身、少し前に沖縄に旅行に行ってきたので、
沖縄描写で「わかるわかる」という部分があってより面白く読みました。
変な味のコーラがあったり、年輩の方がすごく元気だったり、あとちょっと異国な雰囲気があったりしますよね。
(そんなせいか、お店の人に話しかけられてつい海外旅行気分で、thank youと言ってしまった私です…(恥))
そんな沖縄のいいとこ、そうじゃないとこをさらっと描いていく日常ミステリです。


<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
大家族の長女に生まれた天下無敵のしっかり娘ヒロちゃん。ところがバイトにやってきた那覇のゲストハウス・ホテルジューシーはいつもと相当勝手が違う。昼夜二重人格のオーナー(代理)や、沖縄的テーゲー(アバウト)を体現するような双子の老ハウスキーパーなど規格外の職場仲間、さらにはワケありのお客さんたちにも翻弄されながら、ヒロちゃんの夏は過ぎてゆく―南風が運ぶ青春成長ミステリ。


「シンデレラ・ティース」同様に雰囲気は軽め。でも、日常のミステリのその真相はちょっと重めでした。
友人のサキちゃんは、割とスムーズに職場に慣れ、怪しいお客さんともめでたしめでたしで、
すっきり終わるお話なのに、この本の主役のヒロちゃんはトラブル続きでかなりハードに頑張ってます。
大家族の長女でしっかりもののヒロちゃんみたいに、
できる人にはできる分だけ仕事が与えられてしまうんだろうか。
私がヒロちゃんと同じ立場だったら、絶対挫折してるよ…(-_-)

沖縄は「てーげー」文化で、良くも悪くもいい加減のようです。
ほどほどに、無理をせず、って感じでしょうか。
この本の中でも、外からの人が沖縄に来て良くも悪くも自由にやってますが、
それに対して沖縄の人が大らかに受け流す感じがありました。
沖縄という土地自体が特殊な背景を持つことから、
外部からの圧力を受け流すような独特な文化が育ったのかなぁ。
そうすると、お堅い正義感を持つヒロちゃんにとっては、なかなか居心地の悪い場所になるはずなんですが、
さすが沖縄のてーげーな空気の方が上だったようで、
そんなヒロちゃんもだんだん角が取れたように馴染んでいきます。

ゆるゆるでほのぼのだった「シンデレラ・ティース」とは少し趣を変え、
こちらは少し毒や影を持った話になっています。
もやもやが残る感じの話も多いですしね。
ただ「シンデレラ・ティース」に比べてシリアスさが増した分、その他のリアリティのなさが目立って、
少しちぐはぐな印象になってしまった気がします。
オーナー代理の不思議感とか、ヒロちゃんの正義感とか、お客さんとの結末とか、
少しずつしっくりこないものも感じました…。
なので、どっちかといえば、ファンタジー感たっぷりな「シンデレラ・ティース」の方が
読みやすくて好みだったかな。

とはいえ、こちらも面白く読みました。坂木作品、もう少し読んでいこうと思います(^^)