駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『下町ロケット2 ガウディ計画』 池井戸潤

これはですね、先に新聞で読んでたんですよ。
本は新聞連載の時よりかなり書き足されているようなので、同じものとは言えないのですが、
再読に近い感じで読みました。
新聞連載を読み終えた後は結構感動したんですが、今回は良くも悪くも落ち着いて読んじゃった感じ…。
でも今回一気読みでしたし、面白く読んだのは間違いないです!
ちなみにドラマは全く見ておりません…(^_^;)なんか阿部さんがイメージじゃない気がして…。
でも評判は良かったみたいですね(^^)


<内容紹介>(出版社HPより)

その部品があるから救われる命がある。
ロケットから人体へ――。佃製作所の新たな挑戦!

ロケットエンジンのバルブシステムの開発により、倒産の危機を切り抜けてから数年――。大田区の町工場・佃製作所は、またしてもピンチに陥っていた。
量産を約束したはずの取引は試作品段階で打ち切られ、ロケットエンジンの開発では、NASA出身の社長が率いるライバル企業とのコンペの話が持ち上がる。
そんな時、社長・佃航平の元にかつての部下から、ある医療機器の開発依頼が持ち込まれた。「ガウディ」と呼ばれるその医療機器が完成すれば、多くの心臓病患者を救うことができるという。しかし、実用化まで長い時間と多大なコストを要する医療機器の開発は、中小企業である佃製作所にとってあまりにもリスクが大きい。苦悩の末に佃が出した決断は・・・・・・。
医療界に蔓延る様々な問題点や、地位や名誉に群がる者たちの妨害が立ち塞がるなか、佃製作所の新たな挑戦が始まった。

日本中に夢と希望と勇気をもたらし、直木賞も受賞した前作から5年。
遂に待望の続編登場!



(少々ネタバレ気味の感想です。未読の方はご注意を!!!)



王道、池井戸作品って感じですね。もう展開が分かってるんだけど、でも面白い。
それが池井戸クオリティ!!
ロケットの部品を作ってた会社が今度は小宇宙=人体にチャレンジするってのが、面白いなぁと思いました。
全然ベツモノのようなのに、「宇宙」で繋がるこの二つに挑戦する会社って、なんかスケールがでかくって、
夢を熱く語る佃社長らしいなぁと。
まさに「夢」の結晶のようではないですか。

一番胸を打たれたのは、心臓弁を作る立花とアキちゃんが試作づくりに行き詰った時に、
心臓病を抱える少年の手術に立ち会って、自分たちの仕事の本分に還る場面。
そういう揺るがない土台を持ってこそ、尊い仕事ができるのだろうなぁ。
社会に出るとたくさんの理不尽と戦わなくてはいけなくて、ただの正義感だけじゃ挫折しかねません。
もっと確固たる土台が必要なんですね。
そういう足元を確認する過程が描かれていた、この部分はジーンときました。

ただ、読後に振り返って、残念に思ったこともいくつか。
まず佃製作所が乗り越えるべきハードルが、ただの人の嫌がらせでしかないところ。
結局、佃の技術力を妬んだ人たちが、邪魔してくるから、彼らが困難にぶつかってしまうわけで…。
だから敵方になる方々がみんな悪者感が半端ないんですが、それもあんまりかなぁと。
もっと、敵方なんだけど、彼らは彼らで一生懸命というのがもう少し見えたらよかったのに…。
(それっぽいセリフはあったけど、その前後がひどすぎて、あまり親身で聞けなかった…)
池井戸作品なんだから勧善懲悪なのはわかってるけど、椎名さんなんか、せっかくのNASA設定が、
肩書と人脈くらいしか活用されてなかった…。もっと技術的にもNASAっぽさを見てみたかったなぁ。
貴船先生の最後の改心もなんか取ってつけたようで残念。
最後、一村先生と「コアハート」に取り組むくらいの可能性をもった善意を、作品途中で見たかったです。
もう作中ずっと、権力に目がくらんだただの悪い先生でしかなかったもんなぁ。
あと、全体的に浅さを感じてしまったのは、
池井戸さんお得意の銀行が絡まなかったせいだろうか…とか思っちゃいました(^_^;)

でもそんな瑕疵が、読後反芻し直してからしか、思い浮かばなかったくらい、
読んでる間はがっつり引き込まれて読みました。
やっぱ池井戸作品の読ませる力はすごいです。

あと感慨深く思ったのは、佃社長が前作よりずいぶん控えめになっていたこと。
前は先頭切って、社員を引っ張っていっていたのに、今回は割と裏に回って見守るって感じでしたね。
佃社長の精神が社員たちにも行き渡ったのだと、佃製作所の成長を感じました。

テレビ「ガイアの夜明け」が大好きな私。
日本のモノづくりの現場を覗けるようなこのシリーズは、やっぱり読んでてとても面白いです。
続編も是非是非期待したいです!