駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『ギケイキ 千年の流転』 町田康

やー、面白かった!
町田さんは名前しか知らなくて、多分私の好みの作風ではないだろうと(←失礼(^_^;))、
これまで読むこともなかったのですが、タイトル見て飛びつきました。
「ギケイキ」→「義経記」ですからね。

どういう設定かよくわからないんですが、冒頭で「ハルク・ホーガンと聞くとハルク判官と変換してしまう」などと、
私レベルの阿呆なことを言い出す彼が、語りの主人公・義経なわけです。(※判官→源義経のこと)
生まれ変わってかどうかは知らないけれど、なぜか現代を生きてるらしい彼が、
自分の生い立ちを現代感覚の現代語で語りだすという体裁。
(現代語っつーか、義経たちめっちゃノリ軽いッス。)
町田康さんは、想像通りちょっとクセはありましたが、
でもでも面白さの方が上回って、がっつり引き込まれて一気読みでした!

義経記」については、私も原典は読んでないんですよね。
でも以前「大塚ひかりの義経物語」という超訳義経記」とも呼べる本は読みました。
その記事を見ていただければわかるかと思うんですが、ヒーローであるはずの義経さん、
「ほんとそれかっこいいのか!?」とツッコミどころ満載の事をやりまくっております。
これをシリアスに小説化なんてしたらおかしなことになりそうだと思ってたんですが、
そっか、こうやってパンクにしちゃうと結構ハマるのね!と新発見。

読んでると、カタカナ語、現代語、英単語、方言、etcの列挙で突き進む、むちゃくちゃな話なんですよ。
義経さん、好き勝手言いたい放題やりたい放題じゃないっすか、町田さんやりすぎですよ、
と言いたくなるのだけど、怖いのは、
こんな無茶苦茶な話が実は思った以上に原典に忠実なところなんですよ…。
義経たちが腹の中などで言いたい放題なのは、町田さんの解釈(andツッコミ・笑)もかなり入ってるんですが、
彼らの言動はほぼ忠実なんではないでしょうか。(私も原典を読んでるわけじゃないんですが…)
町田さんの暴走気味なテイストが、無茶ぶりな原作と絡み合って、なかなか面白い作品になっていました。

実際、どんな感じかちょっと見てみましょう。

以下、義経が鏡の宿で盗賊をやっつけた時に、義経が書いた立て札の文面を「ギケイキ」から引用します。


「見よ。悪い奴を誅殺したのでここに晒す。あの有名な盗賊、出羽国の由利太郎、越後国の藤沢入道、及びその配下三名である。となると、おまえ誰?って話に当然なるだろうが、一応、匿名希望である。京都三条の金商人・吉次の関係者といまは言っておこう。私の十六歳のデビュー作と思ってもらっていい。京都を出る記念イベントとしてこういうことをやらせてもらった。もっと詳しく知りたい人は鞍馬寺の東光坊あたりにいって聞いてみるといいよ。きっといろいろ聞けると思う。承安四年二月四日」

いやいや、こんな自己顕示欲たっぷりなフリーダムな立て札たてちゃいかんだろと思うと、
大塚さんの本では次のように超訳されているんですね。

「音に聞くらん、目にも見よ。出羽の国の由利太郎、越後の国の藤沢入道ら、盗賊五人の首を斬って、通る者を誰だと思う。黄金商人三条の吉次にとっては縁ある者だ。これこそ十六歳の初手柄だぞ。都を旅立つ門出の置きみやげだ。詳しいことを聞きたければ、鞍馬の東光坊の辺で聞け。承安四年二月四日」

って、内容ほぼ一緒じゃん!
ちなみに原文はこちら。

「音にも聞くらん、目にも見よ。出羽の国の住人、由利の太郎、越後の国の住人、藤沢入道以下の首五人斬りて通る者、何者とか思ふらん。黄金商人三条の吉次が為には縁あり。これを十六にての初業よ。委しき旨を聞きたくば、鞍馬の東光坊の許にて聞け、承安四年二月四日」とぞ書きて立てられける。さてこそ後には源氏の門出し済ましたりとぞ舌を巻いて怖おぢ合ひける。


いやいやおそろしすぎる、義経様。

だけど私の中でも、もともと「義経さん=わけわからん人、頼朝さん=得体のしれん人、
弁慶=行き当たりばったりな人」という印象で、そのイメージからはそんなにかけ離れてませんでした(笑)
あ、でも頼朝さんは想像よりは人間臭く書かれてたなー。

これ読んで、今大河でやってる「真田丸」を思い出しました。
脚本の三谷さんは、史実はほぼ忠実に抑えつつ、その余白の部分でかなり遊んでいたり、
奇抜な解釈を入れたりして、歴史ファンにもそうでない人にも楽しめる作品を書かれています。
今回もそんな感じに近いです。
基本は「義経記」を抑えながら、現代では理解しがたい彼らの不可解な言動を、
町田解釈でわかりやすく読みやすく、その上、面白く書かれています。
ふざけた雰囲気の本だけど、実は入門編にぴったりなのでは、と思います。

でも実はこの本、一冊では完結しないのです。
私は読む前に知っていたので戸惑うことはなかったですが、
知らないと中途半端なとこで終わってビックリすることになるんだろうな。
この本では、義経が弁慶と出会って、そのあと旗揚げした頼朝に会いに行こうとするところで終わっています。
全4巻の予定だそうで。

男女問わず人に好かれまくりな義経さん(稚児出身だから菊○が狙われるのも仕方がない!?)、
義経記」ではなんだかんだと慕われた方々と泣く場面が多かった気がするけど、
この本の義経さんはあんま泣きそうにないなぁ。この先泣くのかなぁ?
義経記」では、義経さんの一番の見どころの源平合戦がほとんど描かれないのだけど、
この本でも省かれちゃうのかしら…(>_<)
平家さんの出番が見たい私としては、そこは描いてほしいのだけど…。
まあなんにせよ、続きが楽しみ、楽しみ。
長期連載になりそうですが、じっくりお付き合いしていきたいと思います(^^)/