駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『俗・偽恋愛小説家』 森晶麿

「偽恋愛小説家」に続く第二弾です。童話解釈を交えたミステリで、前作を面白く読みました。さて、今回は?

中学生の時に、童話にハマりました。
幼児向けで読んでた単純なお話が、分厚い童話集で読むと、
結構残酷だったり、不可思議だったりな要素が増えてとても興味深く、その毒っ気に惹かれていました。
平気で首やら足やらちょんぎったり、悪いおばあさんを殺してしまってめでたしめでたしとかって、
すげーなおい、とツッコミ要素満載でした。
そういう色んな違和感を、「童話ってそういうもの」としてその時は読んでたんですが、
この本ではその違和感を「解釈」していきます。

<内容紹介>(出版社HPより)
「白雪姫」「ラプンツェル」「かえるの王さま」「くるみ割り人形」――誰もが知っている、おとぎ話に隠された、恋物語と事件の≪真相≫を“偽"恋愛小説家&駆け出し編集者コンビが読み解く連作恋愛ミステリ第2弾。 
恋愛小説家・夢宮宇多は、デビュー作『彼女』が話題となり次回作が待ち望まれていた。ところが、担当編集者の月子が催促をするものの、夢宮は次回作の『月と涙』の原稿の続きを、書いてくる気配がない。そのうえ、「夢宮が女性と仲良く歩いていた」という話を、月子は同僚から聞いてしまう。 現実とリンクする夢宮の次回作のラストで、主人公の青年は「月」と「涙」どちらを恋の相手に選ぶのか……?続きが気になりながらも、月子はヤケを起こし、お見合いを引き受ける。その相手は子供の頃に憧れていた人だった。

◆第1話「白雪姫に捧ぐ果実」
豪華客船【スノーホワイト】で、スキャンダルの最中の美人女優が突然死してしまう。
◆第2話「ラプンツェルの涙」
ラプンツェルの魔女さながらに、歌姫を大切に育ててきた演歌歌手の女。歌姫の裏切りに、女の愛憎は……。
◆第3話「カエルの覚悟と純愛と」
大物恋愛小説家の屋敷に招かれた、月子。カエルを偏愛する作家は、胸の奥底に隠している【秘密】があった。
◆第4話「くるみ割り人形と旅立つ」
夢宮の元想い人・涙子が誘拐された!? 夢宮と一緒に、彼女を救出しようと奔走する月子だが――。



森先生の本は、割と恋愛パート重視で読んだりするのですが、
今回は恋愛部分はほぼスルーで読んでしまいました(^_^;)
月子…今回は全然感情移入できないよ…。
夢センセに惹かれながら、幼馴染のお兄ちゃんの求愛に折れそうになるって、設定としてはありがちだけど、
お兄ちゃんはどこか嘘くさいし、夢センセははぐらかしてばっかりでわけわからんままだし、
何より月子というキャラがなんだかブレブレで、読者としては惹き込まれませんでした…。
もはや童話解釈とシンクロさせるために、月子ちゃんこんなにブレブレになっちゃってるのねなんて、
ついメタ視点で読んでしまったくらいです…。
というわけで、今回は童話解釈をメインで楽しみました。そちらはなかなか読み応えありましたよ(^^)/



(以下、ネタバレありの感想です。未読の方はご注意を!!)



第1話「白雪姫に捧ぐ果実」。
「白雪姫」の話、そうそう、ベッドのサイズが合わないのよ。
当時はそこはスルーして読んでしまったけど、確かに不思議だわ、と思いました。
童話って細かく読みだすと違和感だらけなのだけど、それ故にすべてスルーになってしまいがちなんですよね。
こうやって改めて紐解かれるのがたまりませんな。
ただ小人の一人が鏡という真相は、一つの可能性という感じでそこまで納得はしなかったですけど。

第2話「ラプンツェルの涙」。
ラプンツェル」の解釈はいまいち納得いかなかったなぁ。XとYだなんてぴんとこない。
でも本編の真相の方はなかなか面白く読みました。
弟子の活躍にそこまで嫉妬深いのも、大御所にしては器が小さいなぁと思っていたけれど、
恋愛感情が絡むというなら、納得できました。
ステージの無茶な進行など、色々無理やり感はあるけど、森作品だから細かいところは突っ込まない(笑)。

第3話「カエルの覚悟と純愛と」は、童話解釈も本編もよかったですねぇ。
「かえるの王さま」の話はあまり知らないかな、と思ってたんですが、読んで思い出しました。
そう、お姫様、カエルを壁に投げつけるってスゲーってびっくりしたんだった。
んで、ハインリヒ(家臣)って、突然出てきてなんだこいつ!って思ったんだ、って。
もうこの解釈読んだら、それしかないって思えちゃう。
もし中学生の時にこの解釈を知ったら、めっちゃ興奮しただろうなぁなんて思いました(笑)
その頃にやおいという世界を知ったもの。(当時はまだBLとは言ってなかった)
童話に絡めた事件の真相もなかなか面白く読みました。

第4話「くるみ割り人形と旅立つ」。
くるみ割り人形」、これも知らない話かなと思ったら、少し覚えがありました。
作者の背景などは全然知りませんでしたが。バレエの曲の方が広く知られてますよねー。
この誘拐の真相はすぐに気づきましたね。
だからますます月子視点で話が読めなくて、感情移入しそこないました。
だから、月でも涙でももうどっちでもいいよ、とちょっと投げやり気味になったり…(苦笑)

あと、作中作にも違和感を感じました。
夢センセの書かれるお話、うっとりする文章みたいな記述があったけど、
本編と作中作の文体に全然違いを感じず、恋愛小説っぽくは思えませんでした。
(文体の違いがないのは、前作を踏まえても問題ないのかもしれないけど…)
そんな点で、夢センセも魅力減。でも「悪いのは意地だけ」というセリフは夢センセらしくて好きでしたけど。

そんな感じで登場人物に対して愛情が薄れてしまった今作ですが(^_^;)、
童話解釈はやはり好きですので、続編があるならまた読みたいなぁと思います。

余談。
黒猫シリーズ5周年ということで、ツイッターで丹地センセイがお祝いイラストを描かれていて、
それに森先生がセリフを付けています。ファンの方必見!