駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

AX 伊坂幸太郎

さてこの頃では、本からすっかり離れて、予約しても読まずに返すことが多くなり、
さらには予約すらもほとんどしなくなってしまったこの体たらく!
しかし、ラッキーなことに、知人から「AX」を借りられることになり、
ほくほくと久しぶりの伊坂ワールドを堪能したのでした。



(少しだけラストに触れる記述あり。気になる方は読まれませんよう…)



さて、今作。
グラスホッパー」「マリアビートル」に続く作品となるわけですが、
伊坂さんの続編は全くカラーを変えるのが常。
今作も、また味付けの違う作品となっておりました。

なんでしょうね、この切なさは。
悪い職業なのに憎めない、伊坂さんらしい人物造形は相変わらずだけど、
こんなに主人公に入れ込んじゃって、最後切なさいっぱいになっちゃうのってずるいなぁ。
ネタバレになりますので、ラストの章についてはあまり語れませんけど、
私はあれはハッピーエンドだと思ってます。
罪を背負った上で、きっちりと方を付けたんですから。

今回の主人公は、恐妻家の殺し屋さん。なかなかインパクトのある肩書なわけですが、
でも本当に恐い妻だったのでしょうか?
ちゃんと読み返せてないので、確認はできてないんですけど、
妻が怖い態度をとった描写はあまりなくて、主人公・兜が、一方的に怖がっているように、
わざわざ書かれているように思えました。
息子が気の毒がるくらい、兜は妻に気遣いまくるわけですけど、
それは殺し屋としての彼の特質でもある、他人の気配や人の気持ちに非常に敏感なところが、
妻には災いしているように思えました。

最後の方を読めばわかりますが、お互いに相手を思いやってる夫婦なんですよね。
だから兜は、妻を恐れる、ではなく、畏れて(優れたものに対して敬い従う、おそれはばかる)いたわけで、
恐妻家というよりは、恭妻家(当て字だけど)だったのではないかと思うのです。

とはいえ、この恐妻家設定は、今回とてもいい味を出していて、様々な場面でくすりとさせてくれます。
描写がとてもリアリティあるので、本当に恐妻家の方は共感してしまうのでは、と思うほど。
行きつく際は「魚肉ソーセージ」ですよ、お父さん!
そんな哀愁漂わせた兜の、息子との場面がかわいくて好きでした。
それでいて、本稼業の場面は、本当に強くて!そのギャップにやられてしまいそうでした~。

今回も期待に違わぬ面白さでした!

ちょっとサブタトルが気になったんですけど。
「AX」「BEE」「Crayon」「EXIT」「FINE」。
ABC順に並んでるように思うのだけど、「D」はどうしたんだろう。
なんか意味があるのかなぁ?