駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『おやすみラフマニノフ』 中山七里

「さよならドビュッシー」とリンクする二作目、と言ったらいいかな。
前作に出ていた人物の再登場や、前作と話的に重なる部分もあって、
前作読まれた方はそういうリンクを楽しめると思います。
でも、前作を読んでなくても、問題なく楽しめますよ。

「このミス」大賞という肩書のせいで翻弄された前作に比べ、作者も読み手も慣れたのでしょう、
すごく読みやすくなってます。
良くも悪くも。
前のような破天荒さがないので、まとまりはあるけど、物語に引き込んでいく力が少し物足りなかったかな。
読みやすさは相変わらずなので、今回も一気読みでしたけどね。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
秋の演奏会を控え、第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに、プロへの切符
をつかむために練習に励んでいた。しかし完全密室で保管されていた、時価2億円のチェロ、スト
ラディバリウスが盗まれる。脅迫状も届き、晶は心身ともに追い詰められていく。さらに彼らの身
に不可解な事件が次々と起こり…。メンバーたちは、果たして無事に演奏会を迎えることができる
のか。ラフマニノフピアノ協奏曲第2番」がコンサート・ホールに響くとき、驚愕の真実が明かされる。
 
ミステリ部分は相変わらず弱くて、音楽メインで読む方が楽しめます。
(私でも犯人わかっちゃいましたから…苦笑)
今回は、音楽ストーリーが前回よりシビアに表現された分、大人しめになっちゃってますが。
音大生の苦労は、「のだめ」でも描かれてましたね。
夢を追いかけてきた人たちの、厳しい決断が痛ましいなと思いながら読みました。
何かのプロを目指すというのは、ふるいに掛けられていくようなものなのですね。
早々に落とされれば、他の道に進みようもあるものを、中途半端に才能があったばかりに、
最後にふるい落とされた場合は、突然道が断たれてしまったかのように、
進むべき道を見失ってしまうのではないでしょうか?
なんとも残酷な世界なのだなと感じました。
それでもその過程を無駄であったと思ってほしくないものです。
そういう人たちを救済する道が、社会的に用意されるといいのですけどね。
 
ラフマニノフ、大好きです。劇的でロマンチックで切なくて。
怒涛のように押し寄せる音の波に、身を任せてしまいそうになります。
でも音楽シーンのメインは、タイトルになってるラフマニノフより、
中盤のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調ですね。
この演奏シーンは圧巻。少々、冗長気味ではあるけれども。
この曲も大好きなので、興奮しながら読みました。
コンサートホールなどで演奏されるのではない舞台設定が、
今の状況と重ね合わされて、息苦しさもありましたが、最後は祈りにも似た気持ちでした。
音楽には人を勇気づける力がある、私も強くそう思います。
 
作品としては今回の方が、まとまっててきれいにできてる気がしますが、
私は粗削りな前作の方が好みですね。
でも音楽蘊蓄とか大好きなので、続編が出たら是非読んでいきたいです。
 
星は三つ。前作を楽しまれた方は、是非読んでみてくださいね。