駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『神様のカルテ』 夏川草介

う~ん、私にはあまり合わなかったです。
なまじ海堂尊さんや、森見登美彦さんの作品を読んでたのがいけなかったのか…?
 
現役医師の作家さんなので、医療系はリアルに描かれ、
文体は「夏目漱石」を意識した古風な言い回しで書かれ、
表紙のように優しい雰囲気のお話です。
 
内容紹介(「BOOK」データベースより)
神の手を持つ医者はいなくても、この病院では奇蹟が起きる。
夏目漱石を敬愛し、ハルさんを愛する青年は、
信州にある「24時間、365日対応」の病院で、今日も勤務中。
読んだ人すべての心を温かくする、新たなベストセラー。第十回小学館文庫小説賞受賞。
 
まず、主人公の病院での話と、「御嶽荘」という変わり者の集まった宿の話が、
私の中でうまく交わらなかったです。
主人公が使う、古めかしい「夏目漱石調」の言い回しは、
森見さんのようでもありますが、
その言い回しが物語の世界観を作るほどではないんですね。
主人公の変わり者ぶりを表してるくらいかな。
そして周りの人に「男爵」「学士」など森見風なあだ名をつけていく主人公…。
「ちょっと浮世離れした感じの話なのかな?」と思うと、
職場の病院のシーンでは、海堂尊ばりのリアルさで専門用語が飛び交うんです。
でもなんか描写が軽いんですよ…。
現役医師が現代医療の問題を訴える節は、海堂さんと似てるんですが、
現状の不満が挙げられているだけで、主人公は我慢と甘受。
主人公医師と患者のやり取りも、
あまりにきれいに描かれてるから、「理想」にしか映らなかったです。
まあ、医療系より癒し系の話なのだろうから、
海堂さんのようにメッセージ性を強く訴える必要はないんですが…。
でも癒しに重点を置くなら、医療シーンはあんなに専門用語使わない方が、
雰囲気を壊さなかったんじゃないかなぁ。
 
感動的なシーンは、なかなかドラマティックに魅せてくれるんですけど、
そこにに至る流れの、説得性が薄いです。
「学士」さんが騒動を起こした原因、
末期患者の安曇さんが半生を振り返る台詞(手紙の方じゃありません)など、
感動的なシーンを作る構成部分が、軽くて弱いため、
いまいち入り込めない感じでした。
 
読みやすくて、いいお話だとは思うんですけど、
私はこの世界に浸れなかったなぁ。
素直に感動できない私は、捻くれてるのかな?
星は三つです。