駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『コロヨシ!!』 三崎亜記

三崎さんの作品を読むのは「となり町戦争」以来で、これが二冊目です。
スポ根モノを書かれるイメージがなかったので驚いたのですが、
読んでみたらスポーツに主題を置きつつも、それを通じて三崎ワールドの国の姿を描いていたので、
なんか納得行きました。

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
20XX年、掃除は日本固有のスポーツとして連綿と続きつつも、何らかの理由により統制下に置かれていた。高校で掃除部に所属する樹は、誰もが認める才能を持ちながらも、どこか冷めた態度で淡々と掃除を続けている。しかし謎の美少女・偲の登場により、そんな彼に大きな転機が訪れ―一級世界構築士三崎亜記がおくる奇想青春小説。

「となり町戦争」では、退廃的で、ずっと雲がかかったような世界のイメージがありました。
今回の作品も、青春スポーツモノらしい明るい陽の下のイメージはありません。
どこか押し殺したような圧迫感が常にありました。
「不自由の中の自由」について作中で書かれてますが、
この世界もまた規制で絡め取られた不自由な世界です。
不自由の中だからこそ、実感できる自由というものがあるのかな。自分の意志であるとか…。
不思議な造語がたくさん出てきて、独特の世界を作ってるのは、
スポーツものというより、ファンタジーを読んでる感覚に近かったかな。
この世界観は嫌いじゃなかったです。

奇抜な「掃除」という競技が、実際に存在するかのように作りこまれた設定は
鴨川ホルモー」のようであり、主人公・樹が「掃除」と向き合う様子は、
心技体で道を極める「武士道シックスティーン」のようでした。
(私にとっては剣道も未知の世界なので…)
昔「掃部」寮という機関があって、宮中の清掃などをやっていたのですが、
そういうのから発想を得たのかなーなんて思いました。
古代の職掌は史料が少なく、細部が不明なものも多いので、
本当にこんなことやってたかも~なんて想像すると楽しかったです。

「掃除」を描く場面が好きでした。
なかなか想像するのが難しいのですが、表紙の絵を参考に(笑)、好き勝手に想像してました。
桜の下で舞うなんてさぞきれいだろうなー。

「掃除」という競技とそれに格闘する樹の姿、そして「掃除」の背景で渦巻く陰謀?あたりは、
読んでて楽しかったのですが、キャラクターが立っているようで立ってないところに少々不満…。
個性的なキャラクターがたくさん出てきますが、
読んでて、愛情を傾けられるほどには描かれてなくて中途半端に思えました。
ラノベの読み過ぎだろうか…苦笑)
登場人物大半が、誰も本音で語らず、何かを抱えていて、表の顔と裏の顔を持ちます。
そのせいでこの世界が非常に胡散臭い。
少しその重苦しい空気を抜くようなキャラがほしかったなぁ。

三部構成(予定?)ということで、謎が明かされるのはまだ先のようですが、
この重苦しい空を樹の「掃除」で見事晴らしてほしいなと思います。

星は三つです。