駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『蜜姫村』 乾ルカ

私にとっては、「夏光」に続いて二冊目の乾さんの本です。
やっぱり乾さんの文章が好きだなーと思ってしまう。
乾さんの表現ってグロさの中に、どこか惹かれる神秘的なものや、目をそらせない禍々しさがあって、
ただグロいだけではないんですよね。
だからホラーやグロいのが苦手なはずの私でも、思わず引き込まれて読んでしまいます。
この本もホラーテイストなファンタジーって感じでしょうか。
この世界にどっぷりはまりこんでしまって、一気に読んじゃいました。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
変種のアリを追って、東北の山村に迷い込んだ、東京の大学の講師で昆虫学者の山上一郎は、瀧埜上村の仮巣地区の人々に助けられ、命をとりとめた。翌年、山上は医師でもある妻の和子を説得し、一年間のフィールドワークのために、再び仮巣地区を訪れた。この村には医師がいなかったため、和子にとってもそれはやりがいのある仕事に思えたのだった。優しくて、親切な村の人々。だが、何日かその村で生活していくうちに、和子は違和感を覚える。―みんな健康的過ぎる…医師もいないのに…。
 
一部はホラーっぽいですよね。謎の村で起こる不思議な出来事、みたいな感じで。
昭和の時代に、平安時代のような時代錯誤の舞台があるのが、より不気味さを増します。
 
二部は主人公が娘に変わって、恋愛ファンタジーみたいな感じになります。
許されぬ恋の行方は?
もう大蜂は、少女マンガのヒーローですよね(笑)
身分違いで、尽くしまくりで、今はやりの「執事系」じゃないですか?
お姫様のために何でもやってくれちゃう。かっこよかったですね。
 
ただ私としては、物語が二部で終わったのが、中途半端な感じですごく残念でした。
これは女三代の物語にして、三部作にしたら物語がきれいに閉じれそうなのに。
そうすればきっと、あの兄弟を残した先代黒王の意図とかもはっきりしてきそうなのになぁ。
こういう過去から続いてきた忌まわしき風習(?)は、
何かのはずみで崩れて、閉じてしまうのがセオリーですよね。
だから閉じてしまわずに、壊れただけの状態が宙ぶらりんな気がして…。
だから、いよいよってとこで終わっちゃったようで、勿体なかったです。
 
あと私がちゃんと読めてないのか、紅蝶の好きな人が分からずじまいで気になります…。
この村の関係者ではないとは言ってるけど、方便っぽいですよね~?
大蜂?黒王?
それともお優?(笑・だって百合の花持って怪しい会話してるし…)
ちょこちょこ意味深に描かれてるのに、あまり掘り下げてくれなかったですよね。
とても惹かれるキャラだったので、もっと彼女の事知りたかったなぁ。
あと黒王の事ももっと書きこんでほしかったなぁと思います。
ただの敵役で終わっちゃった感じなので、勿体なかった。
 
星は三つです。
この世界観はすごく惹かれて、とても面白く読んだんですよね。
ただオチがちょっと弱かった。
この話はもっと大長編で読みたかったなぁ。
でも乾さんの文章がとても好きなので、この先も色々読んでみたいな、と思います。