駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『嫌な女』 桂望実

桂さんの本は三冊目くらいかな。
いつも作品には、そっけないような空気がありますね。
桂さん自身も熱く語るのが照れちゃうタイプなのかな?主人公の徹子のように。
「嫌な女」について、色々語られる感じの本かなと思ったら、
大河ドラマのように女性の半生を追って描かれる作品でした。
思ったより読み応えありました!
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
トラブルを重ねる夏子、その始末をする徹子。特別になりたい女と平凡を望む女。それでも―私
は、彼女を嫌いになれなかった。“鉄の女”と“性悪女”を描く、桂望実二年ぶりの長編。
 
最初読んでて、言ってることが「浅いな」と思ってあまりハマれずにいたのですが、
それも演出でしたね。
年をとって経験を積んでいくごとに、徹子の言葉が、段々含蓄のある言葉になっていくんですよ。
章が変わるごとに、5年前後の年が過ぎるのですが、その変化がよく出てて感心しました。
物語が進むとともに、登場人物や背景に色々蓄積されてきて、
物語がどんどん厚くなっていく様が素晴らしいなぁと思いました。
 
徹子にとって、「嫌な女」である夏子って、
徹子には到底真似できない、ある意味理想だったのかもしれません。
自分の欲望に実に素直な夏子は、頑なな徹子ととても対照的です。
本当に嫌いなら拒絶もできただろうに、
きっと徹子はたまらなく夏子に惹かれてたのだろうなと思います。
夏子の情報を集め、理解しようとする姿勢に並々ならぬものを感じますから(^^)
やがて徹子が夏子を受け入れていくのは、そんな自分に気づいて、
夏子が、自分の替わりにやってくれるように思えて快感になってきたのではないかな?
徹子の夏子への評価が、「否定」から「期待」に変わっていく様も面白かったです。
 
そんな欲望に素直な夏子の姿は、騙してきた男性にも魅力的に映りました。
理性や常識のタガを外して夢を語らせる夏子。
女性にとって「嫌な女」である夏子は、男性にとっては「罪な女」ですよね(^_^;)
そんなひとときの夢を与えることが、夏子の才能だったんですね。
 
徹子とみゆきの友情の場面には泣けました。二人は、じわじわと積み重ねていく関係でした。
親友って学生時代でないと作りにくいものだと思ってましたけど、
大人になっての出会いで、知らぬ間に親友になっていくこともあるんですね。
 
星は三つ。読み応えがあって面白かったです。
表紙がちょっとどうかな、と思いました。内容と少し合わない気がしたので…。