駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『いちばんここに似合う人』 ミランダ・ジュライ

今年は海外物も読んでみようと思っていたので、
「キノベス!2010」で一位に選ばれたというこの本を借りてみました。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英
国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこと
もない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)―。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、
切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めて
の小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。
 
普段こういう文学系の作品を読まないので、とても刺激的でした。
ぎゅっと濃縮された短編一話一話に打ちのめされてました。
いいとか悪いとか、好きとか嫌いとかそういうの越えちゃった感じで。
わけわからないと言えばわけわからないけど、
ある一文に非常にさくっとやられちゃったりして、とても奇妙で新鮮な読書でした。
とっても共感できない人たちなのに、どこか一部分「わかるかも、それ」と思えちゃって、
そうすると登場人物と変な連帯感が生まれてしまって、物語から目が離せなくなってしまうのです。
 
一言で言えば、「性と生」という感じでしょうか。
生々しくもあり、どこかコミカルでもあり。
一人一人の脳内(妄想?)の中には、こんなすごい世界が広がっているのでしょうか。
私も自分の中を怖がらずに覗いて見たら、何かを見つけられるのでしょうか。
角田光代さんが裏表紙で「みごとなくらい挑発的な短編小説が並んでいる」と書かれているけど、
まさにいろんな感覚を挑発してくるような本でした。
 
印象に残った話は「共同パティオ」「何も必要としない何か」「2003年のメイクラブ」
「子どもにお話を聞かせる方法」とかかなぁ。
好きだったのは「あざ」です。一番分かりやすい話だったからかも。
 
翻訳については何も知識ないですが、
この岸田さんって方の訳は、この作品にとても合ってたんじゃないかなぁ。
不思議な話がとても自然に語られていて、文章もとても魅力的でした。
 
かじったくらいしか知らないんですが(^_^;)、江國香織とか好きな人が好きそうなイメージです。
あと村上春樹とか…。(あくまでイメージですよ。そっち系あまり読まないので)
 
この密度の濃い短編集を読んで、なんか川端康成の「掌の小説」を思い出しました。
(これ、まだ全部読み切ってないんですけど…汗)
雰囲気はだいぶ違いますけど、短い一編の中に膨大な背景が潜んでるところが似てる気がしました。
センテンスは簡潔に、そして鮮やかに切り取られるシーンたち。
こういうのは一気に読むのではなく、一編ずつ丁寧に味わいながら読み進めるのが、ふさわしいんだろうなぁ。
(期限に追われて短期間で読んでしまった…(>_<))
 
星は三つ。好き嫌いがすごくわかれそうで、おススメする人を選ぶ本かなぁと思うので。