駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『長い長い殺人』 宮部みゆき

面白かったです!まさにエンターテイメント!
だって財布が喋るんですもの。
財布視点で事件を語るなんて、やられましたよ。
10個の財布たちが語るわけですけど、自分たちの持ち主を中心に語りますからね、
それが事件からそれそうになったり、いきなり確信ついてきたりして、いい具合に翻弄されて、楽しめました。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
金は天下のまわりもの。財布の中で現金は、きれいな金も汚ない金も、みな同じ顔をして収まって
いる。しかし、財布の気持ちになれば、話は別だ。刑事の財布、強請屋の財布、死者の財布から犯
人の財布まで、10個の財布が物語る持ち主の行動、現金の動きが、意表をついた重大事件をあぶり
だす!読者を驚嘆させずにはおかない、前代未聞、驚天動地の話題作。
 
一つの事件を軸に、実に様々な立場から描かれています。
最初は事件に深く関わる人たちから描かれていくんですけど、
事件の全容があらかた出揃った後半から、がらりと視点が変わります。
全く事件と関係ないとこから語られ始め、事件は一般大衆の側から描かれます。
しかしそれが事件と僅かに絡み、事件の真相というより、事件から派生するものが描かれるんですね。
自分とはまったく縁がないと思ってる事件でも、どこかしら関わって、
知らないうちに間接的な被害者になってたり、影響を受けたりするんですね。
事件の真相はどこに!?という思いで読んでると、はぐらかされたような感のある後半ですが、
実はそれは事件を違った側面からあぶり出してるんですね。いやー、実に巧妙な構成に唸らされます。
事件をそのまま追わずに、直接的、間接的な事件の被害者たちを描くことで、
外堀から埋めていくようにして、事件を浮かび上がらせるんですよね。(「火車」もそうでしたね。)
そういうの大好きな私としては、この本はツボでした!
 
語り手、お財布たちも面白かったですねー。
基本、持ち主の好みで選ばれた財布たちなわけです。
見た目も反映されて、持ち主と似た性格をしてたりして、実に個性豊かなお財布たちなんですよね。
持ち主の呼び方も、喋り方も、それぞれ違って、面白い。
でもその個性豊かなお財布達に共通してるのは、どこか「おかん目線」ってこと(笑)
やっぱ財布のひもを握ってる立場ですからね、持ち主に対して、母親のような立場で見守ってるわけです。
そして財布につられ、読者も見守る立場で持ち主に感情移入してしまうわけですね。
お財布たちが語る事件が、○○目当てでなかったってとこがまた皮肉が利いてるなーなんて思いました。
 
ほんと楽しい読書でした。(事件自体は、悪質なひどい話なんですけどね(^^ゞ)
星は四つです。