駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『想い雲-みをつくし料理帖』 髙田郁

シリーズ三冊目です。毎回丁寧に綴られている物語、今回もよかったですよー><。
今回もこれと言って大きな出来事があるわけではなく、優しい人たちの幸せな話が語られるのですが、
これがまた心地いいマンネリと言いますか、読んでてほっとするのです。
もちろん当人たちには日々の中で事件がいくつも起こり、泣いたり笑ったり胸を痛めたりするのですが、
読者側としては激しく気持ちが浮き沈みすることなく、穏やかな気持ちで読めて心地いいのです。
 
そのひとつに、料理の前ではぶれないようにしてる澪の心がけのおかげがあるかな?
料理を前にすると、気持ちをリセットしようとするので、
読者としてもどんなに周りで事件が起こってもきちんと元の場所に戻れる気がするのです。
あと周りの人たちの温かさに毎回救われますね。彼らなら大丈夫と言う頼もしい安心感があります。
 
料理への真摯な姿勢はそのまま人生への真摯な姿勢へと繋がっています。
小さなことを疎かにせず、一つ一つを丁寧に積み上げていくことの大切さを、
この本を読むたびに思い知らされます。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
土用の入りが近づき、澪は暑気払いに出す料理の献立に頭を悩ませていた。そんなある日、戯作者・清右衛門が版元の坂村堂を連れ立って「つる家」を訪れる。澪の料理に感心した食道楽の坂村堂は、自らが雇い入れている上方料理人に是非この味を覚えさせたいと請う。翌日、さっそく現れた坂村堂の料理人はなんと、行方知れずとなっている、天満一兆庵の若旦那・佐兵衛と共に働いていた富三だったのだ。澪と芳は佐兵衛の行方を富三に聞くが、彼の口から語られたのは耳を疑うような話だった―。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第三弾。
 
この本の中で、季節が移りゆくさまを感じられるのが好きです。
今ではほとんど感じられなくなった旬というものを知り、江戸の文化や生活を知り、
当時は日々を送ることが「生きていく」ことに直結しているということを感じます。
今の生活じゃ、いろんなことに鈍感になっていくのも無理ないなーと思います。
(それでいて変なとこに過敏になっちゃってね(^_^;))
せめて一つ一つに真摯にあたる澪の姿勢だけでも少しは見習いたいなーと思います。
 
表題作の「想い雲」の話のラストは印象的で、映像で見てみたいなーと思いました。
野江ちゃんとの話は毎回涙涙になってしまいますね…。
他にも江戸文化で言葉だけでは分かりにくいものもあるので、ちょっと映像化を期待してみたり…。
それでイメージぶち壊しになっちゃうのも怖いんですけど。
 
今回大筋はそんなに大きな進展はないのですけど、次へとつながる種がいくつか蒔かれます。
次くらいから物語が動き始めるのかな?
そして小松原さまが出てくるたびににやけてしまう私…。今回も出番は少なかったけど、正体も見えてきました。
そろそろ物語に大きく絡んでくるかなー??
 
今回星は四つ。安定した面白さでますますこのシリーズのファンになりました。続きも楽しみだなー。