駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『嵐が丘』(下)を読みました。

嵐が丘』(下) E・ブロンテ 小野寺健・訳  光文社古典新訳文庫
 
名作古典と呼ばれるものは、「よいお話」なんだろうとずっと思っていたんですが、
実際読んでみるとびっくりなお話が多いんですよね。
「これが名作なのか!?多くの人に読み継がれてきたのか?!」とビビることしばしば。
だって主人公がまともじゃないのがほとんどですもの。
(私が読むのが、たまたまそういうのばかりなのかもしれませんが)
だけど、そんなお話たちはほんとすごい吸引力を持っていて、
読み手を引きずり込んでしまうんですよね。
その得体のしれない魔力のようなものが、「名作」たらしめるのかなーと思ってきた今日この頃です(^^)
ああ、底知れぬ魅力の名作たちの虜になってきそうです~。
 
というわけで、今回「嵐が丘」を読み終えましたよ。
この話もほんとすごかった。
愛憎劇どころじゃなかったですね。
ヒースクリフとキャサリンは、愛というか、むき出しの渇望のような激しさで相手を求めるんです。
喰うか喰われるかの極限のような愛のやり取りなんですよね。
共感どころか、想像するのも難しい、理解を越えた世界です。
でも読んでてぞくぞくするんです。
お互いに斬り合うように愛を確かめ合う様が、
尋常じゃなくて、恐ろしくて、言ってることむちゃくちゃで、やたら過激なんだけど、
胸を締め付けられるような切なさもあって、引きつけられるんです。
 
私は上巻と下巻をあけて読んでしまったのですが、これは一気に読みたかったなぁ。
私的に山場が下巻の頭だったんですもの。
ヒースクリフとキャサリンの話が下巻冒頭で一旦終わって、
それからはその子供たちの世代である、キャシーとリントンをメインにしたお話になっちゃうんですよね。
ヒースクリフはまだまだ物語をかき回しますけどね)
キャシーとリントンの二人は、キャサリンヒースクリフよりまともな方だと思うんですけど、
(そうはいってもむちゃくちゃやってますけど)
読んでて、ちょっとイライラしてしまうことが多かったです。
感覚がまともに近い分、わがまま言ってるのに素直にムカついちゃったのかな?
キャサリンヒースクリフの自分勝手っぷりは、理解を越えてたので、ムカつきようがなかったですもん。
私はそんな、わけわかんなくて理解を越えるキャサリンヒースクリフの話の方が好きだったみたいです(^^ゞ
 
キャシーとリントンは、何かを競い合うように激しくぶつかり合ったヒースクリフとキャサリンの恋愛とは
また違った愛を通わせます。
ひねくれて子供のようにダダをこねるリントンを、母親のような赦しの心で持って、
キャシーは包もうとして行くんですよね。まあ色々一筋縄ではいかないんですけど。
諸悪の根源は、復讐劇をたくらむヒースクリフ
復讐に取りつかれた彼はむちゃくちゃやるんですよ(^_^;)
 
この人はほんと何者なんでしょう。
彼がきて嵐が起こり、彼とともに嵐は去るんですよね。
諸悪の根源のようであるけど、彼自身もすごく苦しみもがいていて、何が悪いのかわからなくなってきます。
悪魔のような彼が吐く言葉の中に、時々哀しいくらいの愛情の飢餓感があって、
ほおっておけないような、どうしても嫌いになれない変な魅力を感じてしまいました。
 
壮絶で、狂ってて、嵐のように巻き込まれながら読んでしまうこのお話。
正直誰にも共感できず、話にもついていけなかったんですが、強烈な印象を残しました。
この作品が好きかと問われれば、「嫌いじゃない」と答えます。
読んでよかったです(^^)