駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『黒猫の遊歩あるいは美学講義』 森晶麿

これは好みでした。面白かったです。
最初数ページ読んで、何言ってるか全然分からなかったので、「どうしよう」と思ったのですが、
読んでいくうちに要領を得てきて、慣れてくるとハマっていけました(^^)
 
<内容紹介>
でたらめな地図に隠された意味、しゃべる壁に隔てられた青年、川に振りかけられた香水、現れた住職と失踪した研究者、頭蓋骨を探す映画監督、楽器なしで奏でられる音楽……。日常のなかにふと顔をのぞかせる、幻想と現実が交差する瞬間。美学・芸術学を専門とする若き大学教授、通称「黒猫」は、美学理論の講義を通して、その謎を解き明かしてゆく。
 
美学蘊蓄やその他もろもろの蘊蓄など、非常に興味深く読んだのですが、
なにせこちらに知識が全くありませんからね(^_^;)
主要人物二人とも研究者ということで、いくつか説明はぶかれちゃったりするんですもの…。
せめて「私」(この作品の語り手)がど素人だったら、黒猫(通称です)から一から説明してもらえたのに~。
さらにはこの作品は、エドガー・アラン・ポオの作品をモチーフにした6編からなる短編集なのですが、
私、ポオは一冊も読んだことないんですよね…(^_^;)
ポオって、古典ミステリと思ってたんですが、かなり文学的な要素の入ったお話なんでしょうか??
ちょっとこの後、何か読んでみようと思います…。
 
一見、物語に全く関係ないような蘊蓄がたっぷり語られて、
それがやがて真相に絡んでいく様は、京極堂シリーズのようでした。
ただ京極さんほどの懇切丁寧なわかりやすさはなかったですけどね。
そのそっけないのもこの作品の作風なのかな。
でも作者さんの膨大であろう知識量や、
独自の着眼点による奇抜な発想であろう理論など(すんません、推測でしかもの言えません…)、
読みながら圧倒されることしばしば。作者さんのすごさは十分に伝わってきました。
願わくば、もうちょっと私のような無知な人間にも寄り添って書いてくれると、
もっともっと楽しめるんだけどな~なんて(^^ゞ
 
ネタ的には、理論を積み上げていって読み手を煙に巻くような、
リアル感の全然ない真相だったりするんですけど、
主役二人の名前が明かされないこの世界は、どこか異世界のような雰囲気があるんですよね。
だから現実じゃないならそれもありえるのかもね、と私はスムーズに謎解きを受け入れられた気がします。
でもダメな人はダメかも(^^ゞ
ただそんな私でも「秘すれば花」の、彼女の理論は受け入れがたかったなぁ。
恋愛対象じゃなくて、敵役とかで話を作ればもっと受け入れやすかったかも。
 
読みながら、「私」と黒猫の二人がなぜか「のだめカンタービレ」の二人に重なった私…。
全然似てないのになんでだろうと考えて、二人の距離感が似てるのかも、と思いました。
付き合ってもないのに妙に近すぎる距離感とか(笑)ご飯も作ってもらってますしね。
恋愛も仄めかせてるのに、お互い無遠慮なとことか好きです。この先どうなるのかな?
続きが出たら是非読みたいな。これからチェックの作家さんです(^^)
 
星は四つ。蘊蓄好きな私にはたまらない作品でした(^^)