駄文徒然日記

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『ルーズヴェルト・ゲーム』 池井戸潤

まぎれもなく池井戸さんの作品だ、と思えるお話。
水戸黄門的な面白さと言いましょうか。
王道なストーリー展開だから、先がわかってるんだけど、ピンチにハラハラして、敵役にムカついて、
でもラストはハッピーエンドのはずだから、と安心感もあって…
逆転劇が始まると「キタキター!」って感じで盛り上がっちゃいました(笑)
 
これの前に読んだ皆川さんの本を、一週間かけてずっぷり世界に浸りこんで読んだのとは対照的に、
二日で一気読み。読みやすさと引き込み具合はさすがだなぁと思います。
こちらも400P超える厚さだったんですけどね。(さすがに二段組みではなかったですけども)
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
「一番おもしろい試合は、8対7だ」野球を愛したルーズヴェルト大統領は、そう語った。監督に見捨て
られ、主力選手をも失ったかつての名門、青島製作所野球部。創部以来の危機に、野球部長の三上が招
いたのは、挫折を経験したひとりの男だった。一方、社長に抜擢されて間もない細川は、折しもの不況
に立ち向かうため、聖域なきリストラを命じる。廃部か存続か。繁栄か衰退か。人生を賭した男達の戦
いがここに始まる。
 
池井戸さんのお仕事ものは、読んでて元気をくれます。
不景気で、デフレで、と閉塞感から抜けきれない中で、仕事に夢と誇りを持つという真っ当な「理想」を掲げます。
そしてエンタメ性を存分に盛り込みつつ、身近に迫るリアルな現状も、詳細に描いてくれるんです。
このリアリティ溢れる現状が、王道的理想の結末へ行くのが爽快なんですよね。
全然届かない「理想」じゃなくて、
背伸びしたら届くかも?と思える、前向きになれる「理想図」を描いてくれるのが素敵だなと思います。
 
ただ、過去作品の「空飛ぶタイヤ」や「下町ロケット」に比べるとちょっとハマりこみ度が弱かったかな?
過去作品も、この作品と同様、王道と分かってて読んだのに、もっともっと夢中になって読めたんですよね。
今回のは、読者を巻き込むような熱意が少し足りなかった気がしました。
それは池井戸作品のパターンに慣れてしまったのとは、少し違う気がします。
今回は「熱い社長」がいなかったんですよ。
一人で孤軍奮闘する物語ではなく、それぞれの立場で、各々問題に向き合う様子が描かれていました。
だから「オレがやらないと解決しない」というがむしゃらさが薄くて、それぞれがぶつかる壁に対して、
自分自身ではどうにもならないという手詰まり感を、物足りなく思ったりもしました。
まあその八方ふさがりからの逆転劇こそが、この作品の醍醐味なわけですけども。
今回、主人公を定めなかったので、ちょっとキャラたちが散漫な印象になってしまいました。
かといって、また熱血社長を主人公したら、ワンパターンになっちゃいますしね…、難しいですね(^_^;)
中で、一番光ってたのは笹井さんかな。「下町ロケット」の殿村さんみたいでいい味出してました(^^)
 
もう一点、タイトルにちょっと不満…。
社会人野球のゲームと会社の抱える問題を解決する様をかけて、このタイトルにしたのでしょうけど、
野球のゲームを、ラストの最高潮の盛り上がる部分に持ってきておいて、
勝つのがわかってるのはありだとして、
ゲームの点数まで予想出来ちゃうってのは、どうかなーと思いました…(^_^;)
なのでイマイチ試合描写にのめり込めなかったです…(>_<)
まあ、スポーツ小説ではないのだから、仕方ないのかもしれませんが…。
 
そんなわけで、以前の作品ほどはハマれなかったんですが、安定した面白さは間違いありません。
王道的ストーリー展開でありながら、リアリティ溢れる現場の風景は、池井戸さんならでは。
今作品も、面白く読みました。星四つです(^^)