駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『烏に単は似合わない』 阿部智里

惜しい、というのが一番の感想です。
なんかミステリっぽい賞をとってるらしい、と言う中途半端な前知識を持って読んでみれば、
前半は平安時代っぽい世界が舞台の和風ファンタジー
あれミステリじゃなかったっけ?と戸惑いながらも、面白くお妃選びのお話を読み進めていくと、
ラストにどんでん返しが待ってました。
あとで調べてみたら、現役大学生の「松本清張賞」受賞作品だったようです。
 
<内容説明>(amazonサイトより)
松本清張賞を最年少で受賞、そのスケール感と異世界を綿密に組み上げる想像力で選考委員を驚かせた期待のデビュー作は、壮大な時代設定に支えられた時代ファンタジーです。
人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎである若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。朝廷での権力争いに激しくしのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一向に現れないまま、次々と事件が起こる。侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……。峻嶮な岩山に贅を尽くして建てられた館、馬ならぬ大烏に曳かれて車は空を飛び、四季折々の花鳥風月よりなお美しい衣裳をまとう。そんな美しく華やかな宮廷生活の水面下で若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは果たして四人の姫君のうち誰なのか? 若宮に選ばれるのはいったい誰なのか?
あふれだすイマジネーションと意外な結末――驚嘆必至の大型新人登場にご期待ください。

きれいに作り上げられた世界観がすごいです。
見た目は人間のようですけど、八咫烏が支配する一族で、実は鳥に姿を変えられるそうな。
最後、若宮が烏に姿を変える場面は、ハウルを思い出しちゃったな。
なかなか幻想的で素敵な光景だと思います(^^)
そして平安貴族ばりに美しい衣装と居を構えた姫君たち。
四人の姫君たちは個性豊かでありつつ、春夏秋冬の季節になぞらえているから、
慣れ親しんだ感覚で受け入れやすかったです。
そのファンタジー部分はなかなか楽しんで読んだのですが、ミステリ部分がちょっと唐突だったなぁ。
決して悪い作りではなかったと思うけれども。
全5章の作りで、5章目に詰め込まれる内容が他に比べて濃すぎました…(^_^;)
 

(以下ネタばれ気味?未読の方はご注意ください)
 

若宮、あんなひねくれた性格なのに、5章目でいきなり出てきてあの言動はないわ(苦笑)
読者はちょっと置いてけぼり食らっちゃいますよ。
捻くれてていいんですけど、だったらもうちょっと途中に彼の出てくる場面とか挟んでほしかったなぁ。
あれじゃ、全く感情移入できません…。
デビュー作だから、読み手を意識した構成ってのが難しかったのかもしれないけど、
もうちょっと作りがこなれていたらもっと面白く読めただろうなぁと思うので、すごく惜しく思いました。
文章とかは書き慣れてる感じで、すごく読みやすかったんですけどね。
 
星は三つ。
デビュー作らしい不慣れな部分がすごく気になってしまって、ちょっと評価が下がっちゃったんですが、
デビュー作だということと、この若さとしては完成度が高いんじゃないかな。
今後、出される作品が気になります(^^)