駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『カラマーゾフの妹』 高野史緒

面白かったーーーーっ!!!
 
すごいです、よく書かれました、こんなの。
あの「カラマーゾフの兄弟」の続編です。
「カラマ-ゾフの兄弟」と言えば食いついてしまう人間なので(かといって熱心な読者でもない・笑)、
もう読みながら楽しくて楽しくて、興奮しながら読みました。

これって二次創作の同人誌を読む楽しさに似てる気がします(笑)
原作の足りないとこをファンが勝手に補うみたいな感じと言いましょうか。
(だから原作に並ぶ必要はなし!)
原典が、第二部を予定しながら作者が亡くなり未完で終わってるんです。
でも二部の構想が少しだけ残されていて、それが一部とは一見まるで結びつかない設定なんですよねー。
ウィキよれば、『(ドストエフスキーの死後)残された知人宛への手紙では、
「リーザとの愛に疲れたアリョーシャがテロリストとなり、テロ事件の嫌疑をかけられて絞首台へのぼる」
というようなあらすじが記されてあったらしい』という説があるそうで(異説もあるそうですが)、
それを知って「誰か二部書いてー><」ともだえた私には、この本はもううってつけだったわけです。
(アリョーシャって、原作では純朴で真面目な、天使のような修道士なんですよー。それがテロリスト!?)
原作と、文章や雰囲気が違っても(この場合、訳本になるわけですけど)、オリジナルキャラが出てきても、
主要人物のキャラクターが引き継がれてるから、すんなり入り込めるし、
原典の元ネタ使って、辻褄合わせてくるとことか、ぞくぞくっとするほどよくできてます。
 
確かに、「カラマーゾフの兄弟」には違和感がたくさんありました。なにより、序文の違和感がぬぐえません。
作者がきちんと二部を書くことを想定された序文で、第一部だけ読んでも理解できません。
それをこの作品を読むと、そういうことだったのか!?と思わせられるのです。
超大作を元にして、真相を明らかにしようとする意欲作です。
前に読んだ「千年の黙」もそうですけど、実際それが真相がどうかは確かめようがないので、
この際どうでもいいのです。
どれだけ「そうかもしれない!」と思わせられるかどうかなのです。
そういう点では、この作品はものすごく緻密に構成され、
それでいて原典もびっくりな大胆な展開も見せ、盛りだくさんのエンタメ作品でした。
膨大すぎる「カラマーゾフの兄弟」は、違和感なんだか、未熟な理解なんだかこんがらがってしまって、
なんとなく読み進めてしまった私ですが、
この本を読みながら、言われてみれば、確かにあちらこちらに不審な点があることに気づかされます。
それを一つ一つ高野さんは検証してくれるんですよね。
いちいち「うわ、そりゃありえるかも!」と納得させられました。
 
これ読んで、再びカラマを読み返したくなりました。
ただ気軽に手にとれないという、ジレンマが…(^_^;)京極さんの再読ですらなかなかかなわないのに…。
今回の内容を忘れないうちに再読したいものですが…(苦笑)
 
出版の際にタイトルが「カラマーゾフの兄妹」から「カラマーゾフの妹」と改題されています。
確かにカラマーゾフの妹はこの話の中に出てくるけど、話の一要素でしかなく、
メインにするには弱すぎます。この改題は良くないなーと思いました。
でも選評で、もとのタイトルを褒められているのに、あえて変えたってことは、
やはりそのまま使うのには色々支障があったからなんでしょうね。ちょっと勿体ないなーと思いました。
 
あと「カラマーゾフの兄弟」を知らないと、とっつきにくいだろうなーと思います。
あらすじを知ってるだけだと、このすごさは分かりづらいだろうなとも思います。
逆に、原作にものすごい思い入れがある人も、まるで別物のこの話は受け入れにくいだろうし、
亀山訳の「カラマ」がダメな人も合わないかもしれません。(光文社版が下地になってます)
そういう意味では、読む人を選ぶ本なのだろうなと思います。
だから「江戸川乱歩賞」というのがふさわしいかどうかは、首を傾げるところです。
私みたいにライトなカラマファンには是非おすすめします(笑)
 
星は四つ。個人的には大満足の読書でした(^^)
高野様、続編希望の望みをかなえてくださってありがとうございました~。