駄文徒然日記

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『怪物はささやく』 パトリック・ネス

怪物はささやく』 著者:パトリック・ネス 原案者:シヴォーン・ダウド 訳者:池田真紀子 イラスト:ジム・ケイ
            あすなろ書房
 
読み始めたら、続きが気になって仕方なく、一気に読み終えて、そしてため息。
なんという本だろう…、これは。
そのくらい圧倒されてしまった。
よかったとか、面白かったとか、そういう感想では括れない。
児童書に分類される本ですが、そんなことで大人の手に届かないとしたら、何ともったいないことなんだ!

<内容紹介>(amazonサイトより)
ある夜、怪物が少年とその母親の住む家に現れた。
怪物はその少年に言う。
「わたしが三つの物語を語り終えたら、 四つめの物語をわたしに話すのだ」と。
そして怪物は付け加えた、その物語は少年が心に秘めた真実の物語であり、 その物語を語り聞かせるために少年が怪物を呼んだのだ、と。
少年が語るべき真実とはなにか?
少年がそれを語り終えるとき、この物語も同時に結末を迎える。
”Chos Walking Trilogy”シリーズ第3作でカーネギー賞を受賞した全英ベストセラー作家が描く喪失と浄化の物語。

例のごとく、新聞で見かけて気になっていた本。
児童書というのは知っていたけど、読んだ後調べてみると、去年の中学生向け課題図書だったようです。
いや、これで中学生に感想を書けって??
大人だって手に負えないよ。
 
そう、感想がうまく出てこないんです。
「児童書」だと思って読んだので、
「え?いいの?大丈夫なの?」と先の展開を心配しながら読み進めることに…。
だって物語が、児童書らしい教訓めいた分かりやすいとこに収まろうとしないんだもの。
 
作中でもそう書かれてるんですけどね。
「物語とは油断のならない生き物だ。物語を野に放してみろ。
どこでどんなふうに暴れるか、わかったものではない。」
 
この言葉は、そのままこの作品に当てはまるんですよね。
怪物が現れるホラーじみた導入部分から、少しずつ語られる少年の背景を掻き抱きながら、
物語がうねり出すんです。
 
真実を語れ、と怪物は少年に言います。
私は、ノンフィクションなんかに触れるたびに常々思うんですが、
真実とは、揺るぎないもので、誤魔化しようがないから、向き合うのが本当に怖いです。
真実は怖い、だから人は嘘をつく。しかも自分に対してまでも!
真実から顔をそむけていると、自分の知らないところで、嘘が枝葉を伸ばし、
自分自身の姿まで覆おうとするのでしょう。
でもその真実の威力も凄まじく、真実と向き合うことは、
どんな事実でもきっと意味あるものになるのだと思わされます。
 
イラストがまた素晴らしい。
ほぼ全ページに挿絵があるのですが、それがこの作品世界を損なうことなく、
私のような想像力の乏しい人には物語を更に膨らませるほどに、魅力的な絵でした。
 
星四つ。
この記事を読んで少しでも気になった方は、ぜひぜひ読まれてみてください(^^)
子供向けの本なので、すぐ読めちゃいますよ。