駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『幸せになる百通りの方法』 荻原浩

荻原浩さん、名前は良く拝見するけど読むのは初めてでした(^^ゞ
どんな話を書かれるかもよく知らなかったんですが、
友人が「結構良かったよ」と言ってたので、手にとってみました。
とても読みやすい短編集、なるほど、いい感じ。
 
内容はけっこう丁寧に作りこんでるんですが、読み手からすると、ほんとするーっと読めちゃうんですよね。
身近な日常を書いていながら、ちょっとした極端さがあって、
それがなんだか、いい意味で作り物めいていているんですよ。
だから、先日読んだ津村さんのがリアルさにひりひりしそうになるのに比べると、
すごくこちらの作品は安全地帯で読めちゃうような気楽さがあるのです。
気負わず手軽に読めて、そして面白い。そんな本でした(^^)
 
「幸せ」はほんのすぐそばに転がっているもんなんだ、とこれを読んで思います。
もちろん真横に大金が落ちてるわけはなくて、すぐそばにある幸せは、幸せの種のようなものなんだけど。
この本で描かれるのは、そこかしこで見られそうな不満がたまる現状で、
その状況はほとんど変わらなかったり、さらに悪くなりそうだったりする。
だけど前ばかり見てきたのを、ふと横を見るようなささいなきっかけで、少し視点がずれる。
すると、今まで見えなかったものが視界に入る。
それだけで、小さな意識変化が起こるんですね。
その違いに気づいて、これから進む道に修正をかけていけば、
行き詰った今の、先が見えてきそうに思える、そんなほっとする物語たちです。
 
震災後の節電生活でおばあちゃんが家電について思いをはせる「原発がともす灯の下で」
オレオレ詐欺を仕事にしてる役者を描く「俺だよ、俺。」
ネットをキーワードに、知らないうちに繋がってる不思議な縁を描いた「今日もみんなつながっている。」
動物行動学を専攻してた女子の、冷静な視点で見る婚活現場、「出逢いのジャングル」
リストラされたサラリーマンがなかなか妻に言いだせず、ベンチ生活を始める「ベンチマン」
歴女な彼女に振り回される彼氏を描いた「歴史がいっぱい」
あらゆる自己啓発本を読みまくり、無理やりポジティブシンキングに突き進む男性の「幸せになる百通りの方法」
と、まさに現代を描く全6編。
 
外れのお話がなくて、どのお話も好きだったな。
くすっと笑えて、ほっとする一冊でした♪