駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『ランチのアッコちゃん』 柚木麻子

息抜きのように読んじゃいました。
柚木さんの「あまからカルテット」が好きだった方には、おススメです。
ご都合主義のような甘い展開や、ちょっと粗雑にも思える会社描写だったりして、
突っ込みどころも多々あるのですが、柚木さんのぴりっとした視点がところどころに見えて、
はっとする部分があるので、軽いだけの読みものにはならずに、面白く読めました。
 
<内容紹介>
屈託を抱えるOLの三智子。彼女のランチタイムは一週間、有能な上司「アッコ女史」の指令のもとに置かれた。
大手町までジョギングで行き、移動販売車の弁当を買ったり、美味しいカレー屋を急遽手伝うことになったり。
そのうち、なんだか元気が湧いている自分に気付いて……。
表題作ほか、前向きで軽妙洒脱、料理の描写でヨダレが出そうになる、読んでおいしい短編集。
 
こんなにうまくはいかないでしょ、ってお話なんだけど、読むとちょっと希望が見えてくる感じです。
四編収録のうち、タイトルにもなってる「アッコちゃん」がメインで出てくるお話は最初の二編。
残りの二つは、別のお話です。
アッコさんたちでもっと読みたかったので、三話目で全然違うお話になってしまったのはちょっと残念でした。
アッコさんの人物像をもっと掘り下げて見てみたかったな。
 
以下、短編ごとの感想を少しずつ…。
 
「ランチのアッコちゃん」
上司のアッコさん、部下に言葉で指導するのではなく、背中で示す指導でしたね。
その意図をきちんと汲みとれた三智子ちゃんも立派です。
他人の説教めいた言葉はいくら正しくても、なかなか心にまでは届きにくい。
やっぱり自分の内側から湧いてくる言葉じゃないと、自分を動かせないものですよね。
会社において、そういう指導って実際には難しいんでしょうけどね…。
お弁当交換から始まるかなり遠回りな手法ですけど、ちゃんと部下が意図を汲んでくれると、効果抜群ですね!
 
「夜食のアッコちゃん」
立場は変われど、指導法は変わりません。相変わらずのアッコさんです。
でも理解のある社長で、このアッコさんがいて、生まれ変わった三智子ちゃんがいて、
なんで会社ダメになっちゃったんだろう…(^_^;)
もちろんリアルでは不景気でそんなこといくらでも起こりうるだろうけど、
物語的にどうなの?と思ってしまった…。作者の都合?…いやいや、そこは突っ込まない。
対立する両者の板挟みになってしまった三智子ちゃん、会社では大なり小なり派閥ってのが生じがちだから、
共感する人も多いのでは?その解決策はほっとします(^^)
 
「夜の大捜査先生」
昔、ギャルやってた主人公・野百合ちゃんの心情がとても興味深かった。
私は、校則を破るのが面倒くさい人間だったので、野百合ちゃんとは全く別タイプでした。
だからギャルな女子ってこんな風に思ってたんだーと、面白く読みました。
このお話のモノローグが一番柚木さんっぽさが出てて、リアルな女子が描かれていた気がします。
学校の先生のゾノセン、いい味出してます。
こういう人は本当にありがたいですよね…。
 
「ゆとりのビアガーデン」
ダメダメと思ってた社員が、上司の、これまで正しいと思ってた常識を次々とぶっ壊してくれます。
仕事には色んな視点が必要なんだな、と思わされますね。
個性を見る、時代を読む、慣例にとらわれない合理性などなど…たくさんの部下をもつ上司は、
仕事をうまく回していくためにいくつものスキルが必要になってくるんですね~(^^ゞ
年をとると感覚が凝り固まってしまいますから…。
一見無駄に見えるものに、チャンスを見るか、見過ごすか。
その視点を変えた面白さを、ここでは描いていると思います(^^)
しかし、最近のこの熱さに、ビアガーデンの言葉の響きはたまらないですね~。
今読むと、早速行きたくなっちゃうかも。(私が読んだのは梅雨時期だったので…)
 
どっしりじっくり味わう豪華ディナーではなく、
短時間で楽しめるランチっぽい気軽さがこの本の売りなのかな。
細かいところは突っ込まず(笑)、さらっと読んで楽しみました(^^)