駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『ワセダ三畳青春記』 高野秀行

ようやく読んでみました。初・高野作品です(^^)
 
高野さんの本を読みたいと思って、図書館で見つけたこの本を借りてきたのですが、
読み始めて「あれ、ちょっと選択間違えちゃったかな」と思ってしまう。
だって冒険ものじゃなかったんだもの。(「タイトル見て気づけよ、って話」)
高野さんといえば、辺境を冒険するノンフィクション作家さん…ですよね。
でも「ま、いっか」と気にせず読み進める。
だって面白いんだもん。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
三畳一間、家賃月1万2千円。ワセダのぼろアパート野々村荘に入居した私はケッタイ極まる住人たちと、アイドル性豊かな大家のおばちゃんに翻弄される。一方、私も探検部の仲間と幻覚植物の人体実験をしたり、三味線屋台でひと儲けを企んだり。金と欲のバブル時代も、不況と失望の九〇年代にも気づかず、能天気な日々を過ごしたバカ者たちのおかしくて、ちょっと切ない青春物語。
 
国内の、それも三畳の住まいというわずかな場所でさえ、
彼にかかれば、こんなにも得体のしれぬ異世界へと誘われてゆくものなのか(笑)
そのくらい時代も場所も疑いたくなるほど、アナザーワールドが繰り広げられる、野々村荘。
その彼が広い世界に飛び立ったなら、そこでは何が起きてしまうんだろう、
とその他の本への興味まであふれ出してしまう。
 
目につくもの何もかも興味を惹かれて、思ったことはかたっぱしから試してみたい!という後先考えない行動は、
「少年」は誰しも持ってるものだと思うけど、高野さんの異常な好奇心は半端ないです。
いつまでも「少年心」を忘れない純粋な人だけど、実行力が大人レベルなのでたちが悪い(笑)
読みながら、爽快感を覚えるほどでした。
だって一般の大人には、いろんなブレーキがあるから、まず真似するのは無理だもん。
 
そして野々村荘に集う方々がまた半端ない。
大家のおばちゃんの比類なき包容力のたまもの?
それとも連綿と紡がれてきた歴史ある建物の魔力なんだろうか。
だけどこれって、高野さん目線で書かれるからなんだろうなぁ。
大学出て、会社勤めして一人前みたいなのを「普通」と呼ぶとしたら、
その「普通」からはみ出まくりの人々を、高野さんは非常に愛情をもった視線で見ていらっしゃる。
例えば、「普通」に囚われまくりの私なんかが彼らを書いたなら、きっと別人になってしまうと思う。
野々村荘もものすごく殺伐とした光景になってしまいそうな気がする…(^_^;)
それでいて高野さんは「普通」の人々に対して、卑下してる風も盾突いてる風でもない。
高野さんの中には境界線はなくて、すごく感覚がフラット。
誰を責めるわけでもなく、卑下するわけでなく、どこかどしんと構えてらっしゃる様子は、
だから読んでてすごく心地いい。
 
そんな野々村荘の人々や事件の愛情あふれる描写は、もしやネタとしてわざとそういう風に書いてるのかな、
とか思ってると「ノノコン」なんて言い出す。
ザコンファザコンみたいに、野々村荘に依存してる自分は「ノノコン」だというのだ。
素敵な彼女を部屋に迎えて「彼女が部屋に合わない」と違和感を感じ、
彼女を受け入れがたく感じてしまうくだりなどは、
彼のこの場所に対する愛情はまごうことなき本物だと思わせられる。
きっとここの住人達への眼差しも本物なんでしょうね。ホントすごい人だ、高野さん。
 
そんな高野さんらしく、青春時代がそれはそれは大らかな時間を経て進む。
停滞してそうに見えて、ちゃんと成長していくのだ。
だから読みながら共感する。「私にも、こんな時代があった」
もちろんこんな破天荒なことはしなかったけど、自分の人生の中で、
自分なりに好き勝手やった時期というのはちゃんとあって、
振り返ってみてあれは「青春」と言えるのかな、と思うのだ。
それは何歳から何歳というのを指すのじゃなくて、
自分の自由度が一番高かった時代なのかな、と大人になった今は思う。
だとしたら、たとえば子離れしたりして、また身辺がひと段落したら、第二の青春を迎えることができるのかな?
 
野々村荘を卒業?するきっかけとなる「その人」とのエピソードは、ほんと素敵。
今ではちゃんとご夫婦であるらしいと聞いて、うれしくなる。
ぴたっとピースがはまるように人って出会うんだな、と思う。
やっぱ出会いって「奇跡」だ!
そしてこの本と出会えたことも素敵な奇跡だ(^^)
さすが皆様が推される作家さんだけありました。とっても面白かったです☆
残念なのは、いつものことながら、わが図書館の所蔵数があまり多くないこと…。
まずは!と思ったムベンベがない…><
まあぼちぼち、高野作品を読み進めていきたいと思います~。