駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『烏は主を選ばない』 阿部智里

面白かったです~。

「烏に単衣は似合わない」に続く第二弾ですけど、続編ではなく、前作の裏側が語られてます。
一作目の感想で、「惜しい」と言ったんですが、
それはラストに出てくる若宮という人物が、かなり複雑な内面を抱える人物であるのに、
あまり描写されぬまま出張ってきちゃって、読者として取り残された感があったんですよね。
今回はその若宮サイドをメインとしたお話でした。
こういう背景を抱えてれば、そりゃ一筋縄ではいかない人になるわよねー、と納得できましたよ。
前作の不可解な若宮の行動の裏が、今回はきちんと描かれていて、
若宮に入れ込んで読むことができました。
そういう人物だってわかってたら、前作のラストももっとはまり込んで読めたのになぁと思うけど、
そうすると前作のどんでん返しが薄らいじゃうかなぁ?
(お互いに重大なネタバレはありません。一応どっちからでも読めると思います)
前作と今作、時間軸は一緒ですが、物語の主軸はそれぞれ異なっており別の物語になってます。
でも重なる要素がところどころあり、両方読むと完全版として楽しめるって感じです。
これから読まれる方は、ぜひ二冊一緒に読まれますように~。

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
八咫烏が支配する世界山内では次の統治者金烏となる日嗣の御子の座をめぐり、東西南北の四家の大貴族と后候補の姫たちをも巻き込んだ権力争いが繰り広げられていた。賢い兄宮を差し置いて世継ぎの座に就いたうつけの若宮に、強引に朝廷に引っ張り込まれたぼんくら少年雪哉は陰謀、暗殺者のうごめく朝廷を果たして生き延びられるのか…?


緻密に作り上げられた和風ファンタジーの世界は前作同様、読んでて楽しめます。
一見、平安時代のようでいて、ファンタジー要素が巧く混じってるのが好みです。
(さらっと蔭位の制とか出てきちゃってにまっとしてしまう)
跡継ぎで問題で権謀術数飛び交って、誰が敵やら味方やら。
いろんな人物の言動に読み手が翻弄されるのは前作同様で、面白かったです。
文章は読みやすく、キャラクターはよく立ってます。
(ファンタジーゆえ許されるキャラの暴言ぶり・笑)
うつけ若宮もよかったけど、好きだったのは今回主役のぼんくら雪哉でした。
主への無遠慮すぎる物言いが大好きでしたよ(笑)
澄尾もいい味出してましたしね。
ラノベチックな会話の応酬がとても楽しかったです。
軽妙であるけど、軽薄ではないので、純粋に楽しめました。
前作は女性だけの後宮がメインで、女性たちの内面を個性豊かに描き、
今回は男が主役の政治舞台で、男性たちをそれぞれとても魅力的に描かれました。
それぞれ違う味付けなんですよね。

ラストは少しもやもやが残りますが、
のちの伏線のためのラストだと信じて、受け入れようと思います。
だから、これで終わっちゃ嫌ですよ?
ぜひぜひシリーズ化してほしいと思います(^^)