駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『偽恋愛小説家』 森晶麿

いやー、面白かったぁ。こういうの大好き!!
名作やおとぎ話を読み解いたり、それに準えたお話だったりってのは、非常に好みなんです。
今回モチーフとなってるのは、超有名童話。
「シンデレラ」「眠り姫」「人魚姫」「美女と野獣」の4作品。
ディズニーだったら女の子たちがプリンセスにあこがれる、このロマンチックな4作品が、
なんとも無残に(!)読み解かれていきます。
日本の昔話とかもそうだけど、おとぎ話って昔っから刷り込まれたように頭に入ってるから、
そう言うものとして認識してるけど、実は違和感だらけでツッコミどころ満載だったりしますよね。
森先生の別シリーズの「黒猫」の解体に比べると、題材も内容もとてもとっつきやすくて、
その分物足りなさもあったりするけど、これはこれでよし、です。

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
「第一回晴雲ラブンガク大賞」を受賞して、華々しく文壇にデビューした恋愛小説家・夢宮宇多。その勢いを買われてか、恋愛小説のようにロマンティックな体験談を持つ女性を実際に訪ねて話を聞く、というネットテレビ番組のホスト役の仕事が入ってくる。担当編集・井上月子の説得で仕事を受けることとなったのだが、そこで出会った女性は、まさに現代のシンデレラのようなエピソードを持つ女性であった。しかし、夢宮宇多は話を聞くうちにエピソードの隠された真実に気づいていく…。その一方で、夢宮宇多の受賞作は亡くなった彼の幼馴染みが書いたのではないか、という疑惑が浮上し、物語は意外な展開を見せはじめるが―。アガサ・クリスティー賞受賞の鬼才が放つ、連作恋愛ミステリ!!

「ラブンガク大賞」というネーミングを見て、「ふざけてんなー」と笑ってしまいました。
そんな軽い雰囲気の中、なかなか甘くないブラック要素が忍ばされています。
恋愛小説としても、ミステリとしても、「んん?」って思うような、ちょっと不自然な部分もあったりしますが、
全体的に結構凝った仕掛けがあるし、面白いので、そんな違和感も気にならず楽しめました。
「黒猫シリーズ」のあの二人のファンの方は、こちらの夢センセと月子ちゃんのコンビもおススメですよー。

では、ネタバレしない程度に各話の感想を少しずつ…。

「シンデレラの残り香」
「シンデレラ」って「実は残酷なおとぎ話」で一番有名な作品じゃないかな。いろいろネタになりやすいですよね。
でも「ガラスの靴」をメインに、当時を風刺していると読み解く「シンデレラ」の解釈は、初めて聞いたな。
ストーリーは多少無理やり感はあるものの、おとぎ話と重ねる構成に導入から一気に引き込まれちゃいました。

「眠り姫の目覚め」
「眠り姫」もいろいろ暗喩が込められてる童話だと聞いたことあります。
だけど「人食い」要素は知らなかったなぁ。
100年眠るということにそんな壮大な背景が隠されているとは…この大胆な解釈もなかなか面白かったです。

「人魚姫の泡沫」
童話の解釈の方を楽しんだ前の二作品だったんですが、この話から月子ちゃんや夢センセに話の中心が移り、
物語の方に引き込まれていきました。
恋愛小説要素がちょっと淡白でもったいない気がしましたが、この作品はこういうテイストなんでしょうね。

「美女は野獣の名を呼ばない」
いよいよ夢センセがニセモノなのかどうかの真相が明らかにされます。
これまで楽しく童話解釈とそれに準えたミステリを楽しんでいたのですが、
ここでは作者さんの仕掛けに翻弄されてしまったなぁ。
話が終わった後にまで心憎い演出が…。
伏せられた言葉から、この本自体が…とも思わされます。(どういうことかは読んでからのお楽しみ、ってことで)

がっつり読み応えのある「黒猫シリーズ」に比べると、するするっと読めて気軽に楽しめました。
童話解釈が面白いし、こちらもシリーズ化してほしいなぁ。
黒猫の薀蓄はどこ行った?っていうくらい、非常に読みやすく、
どなたにもおススメできる作品となっております(^^)/
森晶麿作品未読の方も是非是非♪