駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『オーデュボンの祈り』 伊坂幸太郎

伊坂さんのデビュー作を今頃…(^_^;)

デビュー作から、伊坂さんは伊坂さんだったんだなーと思わせる作品でした。
彼の独特なスタイルは最初から確立されてたんですね。これは驚きだ。
しかしすっかり伊坂作品慣れした読者としては、不慣れ感やくどさが漂う文章が読みづらく、
予想外に手こずってしまいました…><
面白かったんだけど、疲れたー(^_^;)
しかしそれを思うと、二作目の『ラッシュライフ』でほぼ完成されてるって、成長度半端ないなぁと感心もしました。

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
警察から逃げる途中で気を失った伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来鎖国を続けているその孤島では、喋るカカシが島の預言者として崇められていた。翌日、カカシが死体となって発見される。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止できなかったのか?ミステリーの新時代を告げる前代未聞の怪作。第五回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。

しゃべるカカシの存在が強烈ですね。
優午って一丁前な名前まであって、どこか物悲しげなのに惹かれます。
カカシってちょっと哀愁あっていいですよね。(絵本のシド・フライシュマンの『かかし』とか大好き)
このカカシが殺される(!?)ことからミステリが始まっていくというのが、とんでもないです(笑)
よくこんな話を思いついたものだ。
未来を知っていながら何もしないカカシは、
神様に近い存在で、小説の『名探偵』のようだなんて書かれていて、ミステリーと称する賞に応募しておいて、
そんなこと言うなんて皮肉めいていて面白いなーと思いながら読んでました。

どこか優しさ漂う不思議な雰囲気の島が舞台で、
殺し屋「桜」の存在や、島の外の城山の異常な悪人ぶりなど、かなり物騒な人がいながらも、
物語の穏やかな空気を壊さない伊坂さんらしい淡々とした筆致。
デビュー作には作家のすべてがあるといいますが、本当にそうだと思える作品でした。

余談ですが、これ2000年に発行されてる単行本なんですけど、
カバー裏の「新潮ミステリー倶楽部 続刊」のお知らせ欄に
宮部さんの「ソロモンの偽証」があってびっくりしました。
そう言えば、ずいぶん前から連載してたんでしたね。
書き始めた当初は、あんなに長い連載を予定してなかったんでしょうね。