『歴史の主役たち 変革期の人間像』 永井路子
古本屋で見つけては、ちょこちょこ買いだめてる永井さんの本。
これも目次見て「必読書だわ!!」と速攻ゲットしました。(源平、太平記好きだもの)
さすが永井さん、期待を裏切らない面白さでした(^^)/
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
政治と権力に恐ろしいまでの執念を燃やしつづけた後醍醐帝、その蔭でフィクサーとして動いた僧・文観や忠臣・楠木正成、南北朝統一をはたし栄華をきわめた足利義満など、中世の「主役」ともいうべき人物たち。歴史の大きなうねりのなかで、その流れを変えようとした彼らの哀歓を、著者独自の視点を交えて描いたノンフィクション。
≪目次≫(…少し省略してます(^^ゞ)
Ⅰ 古代史の明滅
伴善男─絵巻の中の話題の人物
流れを変えたもののふたち─義家・正盛・忠盛・清盛・頼朝
末世を見た人びと─『平家物語の世界』
Ⅱ 執念と野望の世界
後醍醐天皇─理想と現実の狭間で
文観─戦乱の影の主役
楠木正成─その戦法を推理する
Ⅲ 中世の栄光と落日
足利義満─権力の黄金図
義政と富子─応仁の木の葉
よそで書いたものを一冊の本にまとめたもの。
なので、ちょっとばらばら感があるし、結構マニアックな内容なので、手軽におススメはできません。
だけど、この目次に挙げられた人物に興味がある方なら必読です!
正直、伴善男や義満義政あたりは、私にほとんど知識がなくて流し読みしちゃったんですが(^_^;)、
源平、太平記のページは非常に読み応えがありました。
永井さんの鋭い視点はやはり素晴らしいし、物事の価値感がひっくり返る「戦争」を経験した人の考察は、
歴史解釈にもとても深みがあって唸らされました。
変革期をマクロな視点から読み解いているのも興味深いです。
つい私なんかは歴史の教科書にあるように、
当時にすればどこに線引きもなく連綿と繋がってゆくものなんですよね。
幅広い時代をまんべんなく手がけておられる永井さんだからこその卓見に感心させられます。
書かれた年が30~40年前だったりするので、「現代では~」という記述に古さがあったりするのですが、
そんなの気にならないくらい新鮮な驚きがたくさんありました。
興味深かったのは「末世を見た人びと」で、「平家物語」から見る彼らの死生観というのが面白かったです。
永井さん一押しの知盛がなぜ「平家物語」ではほとんど取り上げられていないのか、
維盛入水と末法思想の関係とか、
また戦前教育のせいで理想すぎる重盛にいいイメージがなかったという永井さんが、
重盛を語る話も面白かったです。
楠木正成の戦法を検証するのとか面白かったですね。
正成の落石の奇襲について、安田講堂の攻防戦を引き合いにするのは、
さすが人生経験が違うわと思いました(^^)
文学作品としての「太平記」にケチつけるのも面白かったなぁ。
タイトルが「太平記─そのやりきれなさ、その魅力」だもの。
そんな感じで結構マニアックな感じな本ですが、好きな人にはたまらないんじゃないかな。
興味のある項目を見つけた方は是非!