駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『村上海賊の娘 下』 和田竜

ようやく読み終わりました~。
面白かったです!割と真面目に歴史ものだった上巻が、下巻ではすっかりエンタメ大作となっておりました(笑)
でもその海戦の戦闘ぶりが本当に面白かった。
海上ならではな海賊たちの戦法があるし、海が得意じゃなくても、それなりの闘い方があるわけだし、
互いに策を繰り出す様子に引き込まれました。
えらく物騒な武器も出たりして、陸戦じゃない合戦シーンがなんか新鮮で面白かったですねー。
ああ、村上水軍博物館に行きたい…。

主人公はタイトルにもなってる景なんだろうけど、これはもう漢たちの物語ですね!
私としては、好意的な意味で「少年ジャンプだ、少年ジャンプだ!」と思って読んでおりました(笑)
だって七五三兵衛のしぶとさなんてバトルマンガさながらですしね。
倒したか?と思ってから三度ほど復活してくる。
多分この話がもっと連載され続けてたら、彼は半年後くらいに生き返ってきますね(笑)
「昨日の敵は今日の友」なとことか、主人公が強すぎる敵役や個性的すぎる脇役に押され気味なところとか、
長すぎるバトルとか、昔のジャンプを彷彿とさせました(笑)


<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
織田方の猛攻を雑賀衆の火縄が止め、門徒の勢いを京より急襲した信長が粉砕する。毛利・村上の水軍もついに難波海へ。村上海賊は毛利も知らぬ禁じ手と秘術を携えていた…。信長vs.本願寺、瀬戸内と難波の海賊ども…。ケタちがいの陸海の戦い!木津川合戦に基づく一大巨篇。


女は感情で動き、男は衝動で動く。
男のノリと勢いな部分は女から見て、考えなしに見えて大人げなく思えることもあるけど、
この本ではその理解不能な行動がひたすらにかっこよかった!!
最初はちゃんと損得考えて、道筋考えて、慎重に策を練ってるのに、
いざとなると全部かなぐり捨ててしまうんですもの!そういう男の魅力が存分に出ていたと思います。

逆に景は、私にはあまり魅力的に映りませんでした。
見せ場では男前な行動力を見せるんだけど、それに至る動機に共感しづらいし、
話をややこしくしている人にも見えたので、彼ら(敵味方含めた登場人物たち)にとって、
まだ黙ってさらわれるヒロインの方がましなんじゃないかとか思ったり…(^_^;)

ちょっといい感じになった男女が敵味方で戦うなんて、少女マンガ「BASARA」を思い出したりしちゃうんだけど、
更紗のような求心力は景にはなかったものなぁ。
結局、景の行動の動機には心惹かれなかったんだもの…。
周りも彼女の「門徒の彼らを助けたい」という思いに同意して、参戦したんじゃないですもんね。
「姫様を助けろ」という思いももちろんあるでしょうけど、元々男たちは戦う気満々だったのに、
引き下がる羽目になり、戦うきっかけを探していたところに、ちょうど景が無謀に殴り込んでいったんですものね。
景は話をひっぱるきっかけでしかなく、物語を築き、盛り上げていったのは双方の男たちだと思います。
敵方も味方も男たちが頼もしいのなんの。
景も、七五三兵衛とのラストバトルはなかなか読み応えありましたけどね。
でもこの話を通してみて、景は女が憧れる女ではなかったかなーと思っちゃいました…(^_^;)私だけ??

私の中では、主役は七五三兵衛ですよ!!
不死身ぶりもすごいけど、その心意気に惹かれました。
上巻から下巻まで通して、ずっとぶれなかったし、かっこよかった!!
本人はそんな意図はないのに、有無を言わさぬほどの圧倒的な存在感で周りを引き込んでいく、
その引力がたまらなかったです。
そういう魅力が景にも欲しかったなぁ。
景が七五三兵衛に、「面白い」「面白くない」と言われるのは、下に置かれて評価されてるようで、
対等な関係には見えませんでしたもんね。(まあ景自身も敵わないと自覚してましたが)
タイトルは「泉州真鍋海賊の漢」と書き換えておきます(笑)

そして、その周りの男どもも素敵だった。
七五三兵衛を妬ましくも思いながら、ちゃんと認めて、彼を助けに向かう沼間義清なんか健気でしたねー。
父親との違いがどんどんあからさまになっていくのが面白かったです。
七五三兵衛以外では、この義清と景親、就英が素敵でしたね。
分を弁えてるというか、地に足がついたような堅実さが好みでした。
それでいて羽目を外す時には、ちゃんと外すのもツボ。
自分の弱さを自覚してちゃんと向き合い、そして物語中にどんどん成長を見せてくれるのも素敵で、
惚れ惚れしました。
それ以外でもそれぞれのキャラに個性があって、彼ららしく道を選択していく様が面白かったです。
村上武吉小早川隆景の、言葉のないやり取りも素敵だったなぁ。
言わなくてもわかるという関係がかっこよかった。
孫市ももともと好きで、この作品の中でもかっこよかったからうれしかったです。
欲を言えば、もうちょっと出番がほしかったなぁ…。色々ちょっと控えめでしたね。

緻密に資料を読み込んで丹念に土台を作りながらも、
現代チックなセリフ回しで、ノリと勢いで物語を引っ張っていく手腕は、和田竜スタイルなんでしょうね。
これで歴史ものが幅広い層に読まれていけばうれしいなぁと思います。
純粋な歴史ファンからすれば、賛否両論あるかもしれませんが、私は好きだな、和田作品。
…和田さん、源平書いてくれないかな(そればっか)。