駄文徒然日記

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『給食のおにいさん 卒業』 遠藤彩見

シリーズ三作目にして完結編。
二作目にちょっと中だるみ感はあったんですが、やはり安定した作品でした。面白かったです。
最後はちょっと感動しちゃいましたよ…(涙)


<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
「自分の店をもつ!」という夢に向かって再び歩き始めた佐々目宗は、ホテルでのアルバイトを掛け持ちし大忙し。だが、そんな彼にまたまたトラブルが。栄養士の毛利は、怪我をして病院に。さらには、空気の読めない新入職員の出現で、調理場の雰囲気は最悪に…。給食のおにいさんは、調理場の大ピンチを救うことができるのか。大人気シリーズ第三弾!


一作目ほどの盛り込み感はなかったけれども、相変わらず学校にありがちな問題に真摯に取り組み、
その問題を通じて、どの世代の人にも置き換えられるような悩みに一石を投じてくれました。
そして、YA向きな読みやすさも、映像化しやすそうなノリの良さも相変わらず。
これ、テレビドラマ化すればいいのにな。

最後だからと言って、特別大きな問題を扱ったりするわけじゃないんですが、
佐々目くんが給食のお兄さんになって二年間頑張ってきた成果があちこちに見受けられて、
シリーズを追いかけてきた身としては、端々にジーンとさせられました。
この作品は、スーパー料理人がスペシャル料理を作ってまるっと解決、といった類ではなく、
解決方法もその結果も比較的地味目なんですが、それでこそリアリティがあって、私は好ましく読んでました。
この完結編では、その問題を抱えていた子達の、じんわりと歩みを進めている様子が描かれています。
そして新たな問題と向き合った時の、佐々目くんの頼れる仲間となっている姿にジーンとさせられました。
難しい問題に真正面から向き合うってことは大変だけど、それが解決しようとしまいと、
きっとちゃんと糧になっていくんだな。

そう言うと、主人公はさぞ正義感で溢れたヒーローキャラなんだと思われそうですが、
佐々目くんは決してそんな現実離れした人ではありません。
それでも彼が数々の問題と向き合ってきたのは、
彼が自分の悩みと子供たちの問題を重ねることができたから。
大人の立場で「解決策」を与えるのではなく、彼らと自分自身を重ねて、同じ立場に立って共感できたから。
給食費滞納問題に対して、派手な立ち回りなどできずにじれったくも思ったりするけど、
それが現実ですものね。それでも解決に歩み寄る道はあると、この作品は示してくれます。

栄養士の毛利さん、イマイチつかみどころのないキャラのままだったのがちょっと残念だけど、
それも全て最後で帳消しだわ。
二作目登場の磯部さんも素敵な言葉を残してくれました。
このシリーズが終わっちゃうのは寂しいけれど、よい作家さんに巡り合えたことに感謝。
遠藤さんのこの次の作品を楽しみにしたいと思います。