駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『森に眠る魚』 角田光代

角田光代唯川恵山本文緒など、女性が主役の話を書く、
女性作家さんたちは、同性の「女」が嫌いなんでしょうか?

女性の暗い、嫌な部分を、これでもかと披露しているような作品に思えるのです。
(私の本の選択が悪かったのかなぁ?)
私も女性なので、そういった部分が女性には確かにあると理解できるのですが、
そればかりではないだろう、とも思うのです。
彼女らの作品は、例えば、普通の主婦やOLなど、
(普通って言葉、安易に使うの嫌いですけど、敢えて)
一般の女性が身近に思える設定から物語が始まって、
「あ、私に似てる、わかるわかる」「友人にこんな人いるなー」
って感じに共感するのですが、
途中から、ボタンの掛け違いみたいに何かがずれてきて、
やがてその「普通の女性」が、
狂い、壊れてしまうものが多い、ように思います…。

最初がすごく身近から始まるものだから、その主人公たちの崩れっぷりが、
「あなたもそうなるかも」と言われているような気がするのです。

一時期は冒頭の作家さんの作品を、読みやすさからいくつか読みましたが、
救いの薄い話に、最近は敬遠していました。
話の中の嫌な部分に、思い当たる節もあったりするから、
ますます嫌気がさしてしまうのです…。

そうして避けてた分野の作品なんですが、なぜか怖いもの見たさからか?
珍しく借りてみたのが今回の本。
この本は、幼稚園のママ友の間で、受験熱がヒートアップして、
まわりとちぐはぐになり、
やがて孤独の深い森へと迷い込んでいく…というお話です。

「ママ友」も難しい問題で、お互いの子供の年が近いという共通点だけで、
環境もそれまでの生き方も年齢もまるで違う女性たちが、
「友達」というお付き合いをするのです。
子供の相性も絡んできて、本当に微妙な関係なんですよね(苦笑)
それなのに、つるみたがるから女性って難しいんでしょうね…。
そんな微妙さもこの本は、描き出してます。
ほんとそういう描写がうまいんですよね、こういう作家さん…。

角田さんは、構成や文章はうまいなーと思います。
さまざまなタイプの女性を登場させて絡めていくのですが、
まだ問題が起きてない時から、ひたひた迫る恐怖感…。
がらがらと崩れ落ちていく展開、最後に結末として、わずかな救い。
引き込まれるように読んだものの、後味は悪かったですね。
(この本は、受験熱の激しい地区で起こった過去の事件を
モチーフにしたもののようですが、読んでる時は気付きませんでした…。
あまりの急激な展開についていけなくなりそうでしたが、
事件に至る心理描写としては、リアルに克明に描かれていると思います)

五人の女性が出てくるのですが、どの女性も魅力的に描かれません。
最初は親近感をもって出てくるのに、
途中から壊れてきて、最後にはみんな嫌な人になってしまっています…。
そうなったら、女性は皆「嫌な人」に思えてしまうじゃないですか!?
そこが苦手なんですよね…。
どうして、そこばかり抜き出して描くの!?と。
一人くらい、壊れない幸せな人を出してよ、と。
でもそうすると、女性特有の「比較精神」というか
隣の芝生的考えで、読み手にとってもっと不幸になっちゃうのかな?
「みんな結局同じなのね」という結末の方が安心できるんですかね?

というわけで、作品としての出来は良かったと思うんですが、
私にはやっぱり合わなかったということで、
星三つ、ってとこかな?