駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『天地明察』 冲方丁

ずっと気になっていた作家さん、冲方丁(うぶかたとう)。
図書館がなかなか入れてくれなかったんですが、
さすがに本屋大賞ノミネートが効いたのか(笑)ようやく入れてくれました。
(自分で買えよ、って話…)
 
<内容紹介>(帯より)
江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。
ミッションは「日本独自の暦」を作ることー。
碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!!
 
とても私好みの素敵な作品でした~。
登場人物全てが愛しいです。
私には珍しく、読みながら何度か目に涙が滲みました…。
主人公渋川春海と周囲の人物が、お互いに真っすぐに向かい合い、
受け止め、受け入れられ、さながら星座の星を直線で結ぶように繋がっている様が、
すごく温かったです。
その交わす言葉、想いに涙してしまいました。
 
ラノベ書かれてるからでしょうかね、すごくキャラが立っていていいですね。
台詞センスがとても現代的で読みやすいです。
そういう新しい感覚の時代小説という点では、『のぼうの城』と似たものを感じました。
史実を追う歴史小説というよりは、かなり演出の入った時代小説に近いと思います。
 
渋川春海は、可愛い。一見頼りなさげで放っておけない感じなのに、
雨だれ石を穿つ、その芯の強さ。
最後、碁の職にあっただけある、先読みの鋭さを見せつつ、
静かに満ちた春海の姿は、成長を見守ってきた親のような思いで見てしまいました。
 
他のキャラたちもいいです。
碁の天才、本因坊道策は、憎めない我がままっぷりがかわいいです。
北極出地に関わる建部と伊藤の少年のような老人たち(は失礼かな?)は、
全編に通して胸を打ちます。
春海に関わる女性「えん」と「こと」、対照的なキャラでしたが、どちらも愛らしかった。
水戸光圀保科正之、関考和…など、その他魅力的な人たちで織りなす、暦作りの道程。
たかが暦、されど暦。
暦に天文学や数学が関わるということは漠然としか知らなくて、
「こんなにも膨大で奥深いものであったのか!」と読んでて圧倒されました。
 
余談ですが、神社の絵馬に問題を書き、誰かに解かせるとういう「算学絵馬」。
ネットの掲示板にも通じるものがある気がして、面白いなーと思いました。
知らない人と匿名で交流できるんですよね。
 
後半、暦作りの本筋に入るくらいから会話が減り、史実を追う形になり、
前半と雰囲気が変わります。
駆け足っぽく感じられたので、ちょっと勿体ない気分。
冒頭の繰り返し部分もさらっと過ぎちゃったのが、なんか残念でした。
非常に素敵な作品なだけに、要望も過大になってしまいますね(苦笑)
 
次の時代小説は、冲方さん、水戸光圀を書くようですよ。
この本にもかなり強烈なキャラとして出てきてますので、とても楽しみです。
 
さらなる良いものを書いてほしいという思いを込めて、星は四つ。
五つにしようかどうか迷ったんですけど…。
今度は時代物ではない冲方さんも読まねば。
図書館入れてくれないかな~。