駄文徒然日記

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雪組 『あかねさす紫の花』 一路真輝

ヅカBS視聴日記。
 
飛鳥時代を舞台に、中大兄皇子(後の天智天皇)・大海人皇子(後の天武天皇)の兄弟と、
2人に愛される額田女王との恋愛模様を描いたオリジナル作品。(ウィキより)
 
懐かしのいっちゃん(一路真輝)の舞台です。
私はこれしか知りませんでしたが、何度も再演されてる舞台だったんですね。
この頃よく「芝居の雪組」と言われてましたが、見直してみて納得です。
いやー、役者さんが揃ってる!
台詞がないところでも言いたいことが伝わってくるようでした。
そして、和物が本当にみなさん似合ってて、見た目にもとても美しい舞台でした。
 
しかし歴史物は難しいですね。
竜馬伝もそうでしたけど、どうしても出来事を並べて追いかけるだけ印象になって、
見てる方の感情が入りにくいです。
この時代は私は好きなので大筋は分かるのですが、
この三角関係(舞台オリジナルでは、天比古まで加わって…)は伝わりにくいだろうな、と思いました。
最後も「え?」ってところで終わっちゃうし。このあとが大海人の見せ場なのに。
(歴史物ってこういう風にブチ切れるラスト多いですよね…)
大海人(一路)がちょっと救われないですよね。
 
いっちゃん、耐え忍ぶ役です。兄(高嶺)にいいようにされているのですが、兄への愛情もあるのです。
兄を完全に憎めず苦悩する姿に、見ている方も胸が痛みます。
その分、ラストの反動が響いてきますね。
ラストシーンの、大海人が何かを振り切ったように、衣装が突然赤くなるシーンはどきっとしました。
でもトップさんの狂気の高笑いで終わる舞台って…。
しかもラストの台詞は中大兄の「ばかものー」って。
もう少し何とかならなかったかな~。インパクトのあるラストではありましたけど…。
でもいっちゃん、歌は聞かせてくれるし、本当に和物がよく似合うので、ぴったりな役だったと思います。
 
花ちゃん(花總まり)も、この時まだ研5くらいなのに、
女王なお芝居も可愛い子役のお芝居もきっちり演じ分けていてさすが。堂々としてる様は立派です。
二人の間で揺れる女性、だけど自分の意志では決められない立場で、
その心の微妙な揺れを丁寧に演じていたと思います。
大海人への想いは表沙汰にできず心の内に隠しつつも、強引な中大兄に惹かれてしまう葛藤、
最後、大海人を目の前に、想いを零してしまいつつも留めるところなど、
ただ流されるだけではない額田を見せてくれたと思います。
 
一番魅力的だったのは、ゆきちゃん(高嶺ふぶき)!
この中大兄皇子は、やりたい放題で嫌な奴なんですよー。
なのに、なぜあんなにカッコいい人物になってるんでしょう~。ゆきちゃんすごい。
あなたになら額田がぐらつくのも分かるわー!と納得の魅力でした。
あの匂い立つような色気がすばらしいです。それでいて堂々とした貫録もあって、一喝する台詞も見事でした。
エリザで、もしいっちゃんと役替わりしたらこんな感じだったのかなーと、
ゆきちゃんのトートを想像したりしました~。
 
天比古役のイシちゃん(轟悠)。
ゆきちゃんと役替わりということで、こちらの役は見せ場が少なくウェイトが軽いです。
この役は、イシちゃんにはちょっと合ってない気もしました。
額田を一途に思い続ける役なんですが、心情がそれのみで、
相手役のユリちゃん(星奈優里)への気遣いが見られなくて、あまり魅力的に映りませんでした。
中大兄の方がハマってそうー。
きっとさぞ迫力のある中大兄になっていたことでしょう。(役替わりの方も見てみたかったな)
 
たーたん(香寿たつき)の鎌足。冷静であるけれど、どこか温かみがあって、人間味があってよかったです。
たーたんの冷徹な役も好きですが、こういう黒っぽくても黒に徹さないのもいいですね。
鏡女王(額田王の姉)の翠花果ちゃん、ちょっと霞んでしまってましたね。
この人がもっと目立つと鎌足もたつし、人間関係の深みが出るのに、
花ちゃんばかり目立ってしまって残念でした。
小月役の星奈優里ちゃん、台詞の言い方があまりうまくない気がするのですが、雰囲気があって好きです。
今回も健気な立場に同情してしまいました~。
 
好きだったシーンは「十場・あかねさす紫野」。
額田がそれまで押し殺していた大海人への想いを溢れさせ、
それを掬いあげるように受け止める大海人の、二人の場面は涙でした。
 
この後再演された舞台では、ラストが少し変えられてたそうなので、見てみたいです。
納得のラストになってるかな?