駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

雪組 『カラマーゾフの兄弟』 水夏希

ヅカDVD視聴日記(スカステ録画・東京千秋楽)

これを見るために、原作読みました。読み終えるのに半年近くかかっちゃったけど…。
舞台、よかったです、すごく!

「衝動」という言葉は原作ではそんなに目立った単語ではありませんでした。
「衝動」をテーマに置いたのは、斎藤先生のセンスなのかな?
それがとてもよかったと思います。
まさに「衝き動かされる」人間たちの物語ですから。
構成がとてもよかったと思います。
原作は膨大ですから、原作短縮版と考えると、
いろいろ不備もありますが、そうではなく「宝塚版」ですからね。
立派に舞台作品として作り上げていたと思います。
原作では、他人を欺き、自らにも嘘をつく登場人物たちで、読者が翻弄させられるのですが、
(その不透明さが原作の面白さでもありますが)
真実をすぐにさらすことで、わかりやすくまとめています。
その分、人の奥深さがあまり描けないのですが、
それが役者さんの演技で補われているようでした。

インパクトのあるオープニングでやられてしまいました。
音楽もお芝居もセットも、圧巻ではないですか!
生で見た迫力はさぞすごかったであろうと思います。

原作では人物像を思い浮かべるのが非常に難しいです。
一筋縄ではいかない人々で、台詞の中で180度人間が変わったり、いろんな面を見せるので、
この人はどういう人物であるというのが簡単に述べられないのです。
でも舞台を見て、「ああ、こういう人たちだよー」とすごく実感できたのです。
役者さんの演技に恐れ入りました。
頭の中でもやもやしていた登場人物が、まさにぴったりの形で舞台上に現れたようでした。

特に水さん(水夏希)のミーチャ、となみちゃん(白羽ゆり)のグルーシェニカ、
ハマコさん(未来優希)のフョードルがすさまじかったと思います。

水ミーチャ。はまり役でしたねー!
この役を演じ切りつつ、かっこよく見せられるのは、他にそうそういないのでは??
さまざまな欲望に満ちていて、わがままでプライドが高くて、短気で乱暴、でも情に厚いミーチャ。
一見、トップ男役の役とは思えません。
非常にいろんな顔を見せる難役ミーチャ。でも舞台上では水さんはミーチャそのものでした!
荒さも弱さも見事に表現していて、裁判のシーンでは素直に涙を誘われます。
決して「いい人」ではないのに!
水さんは、歌うまさんではないと思うのですが、心から訴える歌が心に響きました。
完璧だと思います。

となみグルーシェニカ。
びっくりでした。となみちゃんすごい!
媚びと素の演技の使い分けがよくわかって、自分勝手な女なのに、共感出来てしまう…。
気まぐれでいうことやることころころ変わる人なのに、
その態度の変わりようにもちゃんと説得力を持たせられました。
ゾクゾクする悪女っぷりは、カラマーゾフ以外の人間でもたぶらかしてしまえるほど。
私もおもっきりやられちゃいましたよ~。
歌もとても難しい歌でしたが、歌いあげてました。
となみちゃんの役そんなにあれこれ見てないですけど、
これは代表作になるんじゃないですか?

ゆみこ(彩吹真央)イワン。
とにかく「かっこいいーーー!!」と騒いでおりました(笑)
自分を信じ切ってる傲慢さと、最後それを崩された時の脆さの対照が印象的でした。
怪しい人たちを侍らせつつ(幻影とスメル)、
それに惑わされず凛とした姿は本当に美しいばかりでした。
歌も素晴らしくて。
イワンにあの歌声で説得されたら、怪しい宗教でも迷わず飛び込んでしまいそうなほど!
スメルが心酔するわけもわかります~。
カテリーナへのちょっと不可解な態度も、自分の中ですべて答えを導き出してる故、どこか満足げ。
そういうとこも非常にイワンらしくてよかったです。
それでいてあの愛のこもった歌!ゆみこさんの歌にはなぜあんなに説得力があるのでしょう?
生で聞いてみたかったな~(涙)

ハマコフョードル。
ハマコさんの実力は重々に存じ上げていたつもりでしたが、それでもすごく驚かされました。
舞台にいるのはまさにエ○親父そのものではないですか!?
お金に執着し、女に溺れ、自由気まま、それでいて自分を卑下していって見せたり、
アリョーシャに愛情を見せたりする難役。
フョードルとミーチャの対立は物語の一つの柱です。
フョードルが嫌な人物であればあるほど、ミーチャ役が主演として光ると思うのです。
(逆にフョードルが中途半端だと、ミーチャもただのダメ人間に見えかねない…)
この役ができる人がいないと、再演は難しいでしょうね。
宝塚という舞台で、フョードルをここまで演じ切ったハマコさん。
本気の体当たりが胸を打ちました。

こま(沙央くらま)アリョーシャ。
かわいかったです。
家族みんながアリョーシャをかわいがるのですが、
そう思わせるアリョーシャの思いやりがよく出ていたと思います。
裁判の際、ミーチャを信じる意志の強さもよく伝わってきました。

ひろみ(彩那音)スメルジャコフ。
裏に色んな事情を抱えた複雑な人物です。
それを表情や細やかな演技で、よく伝えていました。
何か隠し持ってる感を最初から匂わせる、物語のキーパ-ソン。
イワンへの心酔っぷりも怪しくて魅力的でした。

さゆ(大月さゆ)カテリーナ。
唯一残念だったと思った人…(すみません(>_<))
この物語では態度がころころ変わる人ばかりなのですが、
どの役も説得力を持たせて演じているので、見る人が惑わされることはあまりなかったように思います。
だた唯一このカーチャが、何考えてるのか全く分からなかった。
さゆちゃん自身も、カーチャを理解しきれなかったんじゃ?と思ってしまったほど。
グルーシェニカとの対決シーンも圧倒的にグルーシェニカの方がインパクトあって
対決にすらなってなかったのが残念でした。
これもとても難しい役なんですよね。
この役が浮いてしまうほど、他の人たちの出来がよすぎたとも言えるかと…。
(あまりフォローになってないですね…汗)

五峰亜季さんのイワンの幻影。
面白い演出だな、と思いました。
原作ではあんな最初からいないんですけど、初めからそばに置くことで、
イワンの脆さを仄めかしているようでよかったと思います。
原作とは違う、中性的で怪しい存在。
原作では話す台詞が非常に得体のしれない人でしたが、
舞台では「得体のしれない」をこう表現するのか!と面白く思いました。

人々がぶつかり合う、白熱の演技。
私はDVDでの視聴でしたが、それでも圧倒されました。
色んな意味で宝塚という枠を飛び越えた作品だと思いました。