駄文徒然日記

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『バイバイ、ブラックバード』 伊坂幸太郎

最初、読みながら、なんだか中途半端さを感じてしまったんですね。
伊坂さんと言えば、常に文章に何かの主張を潜ませてるイメージがあるのですが、
今回は全体的にぼやけてた気がして。
でも読後に、元になったという太宰治の「グッド・バイ」を読んで、
この「バイバイ、ブラックバード」が納得できた気がしたかな。
ああ、先にこっち読んどくべきだったなぁ。
 
<内容紹介>
「理不尽なお別れはやり切れません。でも、それでも無理やり笑って、バイバイと言うような、そういうお話を書いてみました」(伊坂幸太郎)。
太宰治の未完にして絶筆となった「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語!
 
「別れ」の話なんですね、これは。「無理やり笑ってバイバイ」ってまさにそんな別れを描いた作品でした。
太宰さんの話に出てくる主人公たちを、伊坂さんテイストで置き換えて、書かれています。
主役の星野はいかにも伊坂さんらしいキャラですよね。
弱くて頼りないのに、人を助けずにはおれない。
優しいというか、人に弱いんでしょうかね?人がいいのともちょっと違う。
これが太宰なら「ダメダメな男」なんでしょうけど、伊坂さんだと「憎めない人」になりますね。

繭美は伊坂作品では見慣れないキャラで圧倒されました!!
強い女性は良く出てきますけどね。
容赦なく周りに毒吐きまくってるのに、意外と折れてくれる部分を見せてくれたりして、
予想外なところに思わず惹かれちゃいます。
自分の外側には強いのに、内側に一歩踏み込まれると弱い人なのかな?
星野ともっともっと付き合いが続けば、もっといろんな側面を見せてくれそうですね。
って、続編は難しいでしょうけど…。
 
色々な結末が曖昧にされたままです。それゆえ余韻たっぷりに読み終えました。
期待を持たせてくれるラストもいいですね。こういうのは嫌いじゃないです。
この全体的に決着をつけない曖昧さは、やはり未完の作品を元にしてることも関係あるんでしょうかね。
「グッド・バイ」は未完ならではの魅力がある気がするので。

男女の別れ話と聞けば、きりきりするようなものを想像しますが、このほんわか感はなんでしょうね。
星野のゆるさと繭美の暴言のメリハリからきてるんでしょうかね?
「別れ話」だけど、明日からまた新しい気持ちになれそうな「別れ」。
一番好きだった話は那美子の話かな。
結果が分からないまま終わるのに、優しい気持ちになれるこの話は、この作品を象徴してるようです。
 
星は三つです。