駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『シューマンの指』 奥泉光

私にとって「鳥類学者のファンタジア」に続いて、二冊目の奥泉さんの作品です。
前作は女性が主人公だったけど、今度は男性。でも前作も今作も女性作家さんが書きそうなお話だなー(笑)
物語は耽美系。
ちょっと作者のナルシズムも入った感じの文章に少し敬遠しつつも、シューマンを語る蘊蓄が面白くて、
シューマンを流してロマンティックに浸りながらの読書でした。
 
面白かったです。私は結構好きだったなー。
でも、この本は好き嫌い分かれるでしょうねぇ。
前半はシューマン蘊蓄が満載。
専門用語を交えながらなので、全くクラシックが未知の人には読み進めにくそう…。
「クララの動機」なんてあんまり説明なしでさらっと書かれるけど、知らなきゃ全然分かりませんよね。
(分からなくても読むのに問題はないんですけど…)
逆にクラシック好きであれば、シューマン語りに、ずぶずぶのめり込めそうです。
分かりやすい美しさのショパンに比べると、ちょっと地味な印象のシューマン
でも、読めば読むほどそのシューマンの音楽が鮮やかに際立ってきて、
シューマンの音楽が新しい視点で見えてくるようです。
 
(以下ネタばれあり。未読の方は気を付けてください)

最初、主人公が「本当は最初からわかっていた気がする」とか言った物言いが、
浸りすぎていてどうかなと思ったり、シューマンを語る「修人」という名付けがクサイなぁとか、思ったんですね。
作者のナルシズムを強く感じられて、意識して作られた幻想的雰囲気に
ちょっと受け入れ難さを感じたのですが、それもラストを読んで全て納得でした。
ちょっとやられた感がありました~。
「私」一人で成り立っていた世界なら、あのような描写もありですものねぇ。
どんなにロマンティックにも、ミステリアスにも、耽美にもなりえることでしょう。
シューマンという人物と音楽を上手に絡めて、幻想と狂気を描いていて、
すごく巧い構成の作品だなーと思うのですが、ラストのどんでん返しについては、少し悩んでしまいます。
このシューマンの世界観を作るためには必要であったとも思えるけど、
ミステリーとして見たら、ちょっと台無しにしてしまってる気もします。
音楽重視の作品だから、こういうラストにしたのかな?

星は三つ。
私は結構気に入ったのですが、人に薦めるのが難しいので、ちょっと四つには届きませんでした。
あと畳みかける終盤は圧倒されたのですが、ラストにちょっと納得しかねるんですよね~(>_<)
でもかなり四つ寄りの三つです。私の星三つはかなり幅広いんです…(^^ゞ
 
余談。
「永峰修人」の語る音楽論は実に興味深く読んだのですが、
「私」が語る音楽は、どうしても「のだめ」の音楽評論家(壮大なポエマー)・佐久間さんを彷彿させてしまって、
素直に浸りきれませんでした…スミマセン(^_^;)