駄文徒然日記

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『アルバトロスは羽ばたかない』 七河迦南

「七つの海を照らす星」の続編にあたります。
前作はデビュー作で、頑張って練り上げて作ってる感があったんですが、
今作は前作に比べすごく洗練された印象です。
前回、七不思議をモチーフにしていたのでお話も七つあったのが、
今回は季節ごとで5つの物語になり、一つ一つじっくり読むことができました。
前回に比べすごく読みやすくなってて驚きました。
そしてラストトリックで、「うわー」ってやられちゃいましたよ~。お見事!
途中、確かに違和感はあったけど、まさかそうくるとは!!
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
児童養護施設・七海学園に勤めて三年目の保育士・北沢春菜は、多忙な仕事に追われながらも、学園の日常に起きる不可思議な事件の解明に励んでいる。そんな慌ただしい日々に、学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件が影を落とす。警察の見解通り、これは単なる「不慮の事故」なのか?だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手掛かりが隠されていた。鮎川哲也賞作家が描く、季節を彩る五つの謎。『七つの海を照らす星』に続く、清新な本格ミステリ
 
私がこの作家さんで好きなのは、陰湿に思えた事件が、
謎解きによって明るい希望が見えてくるところなんですよね。
児童養護施設という暗い背景を背負った子たちが集まる場で、暗くなりがちな話に希望を見せてくれる。
ちょっときれいごとにも思えたりしますが、その優しい視点がすごく好きです。
そして「きれいごと」を見せてくれつつも、そればかりではない面もちゃんと示してくれるんですよね。
だから、リアルじゃないかもしれないけど、「お話」だから理想的でもいいじゃないと思えます。
 
今回は春菜の成長がすごく見れて、よかったです。
三年目ともなるとこんなに立派になれるものなんですね!?海王さんの影響が強いのかな?
前作では子どもの事で翻弄されてふらふらしてた印象だったのに、
今作では自分の足でしっかり立ってるんですよね。すごく頼もしかったです。
おかげで海王さんは出番減っちゃいましたね(笑)
でも相変わらず、優しくて素敵でしたけど(^^)
 
正直、屋上の密室の推理に関しては、よく理解できなかったんですよね(^_^;)
だいたいいつも密室ってきちんと理解できてないんですよ…。
前回の記事で「ミステリ慣れしてきた?」などと書いたのですが、
これを読みながら「やっぱ全然ダメじゃん~」と嘆いてました…(苦笑)
 
これは、トリックがわかった上で、もう一度読み返したい作品ですよね。
でも私は、返却期限が迫ってて無理なんですよね~。ああ、悔しい…。
この作家さんで、違う舞台の作品も見てみたいなと思ってたのですが、
最後まで読んだら、「続編を希望します~」と言ってしまいます。
(これ読んだ方は、同意してくれますよね?)
ちょっと気になるラストで終わってるんですよね…。
 
星は四つ。二作目でこの出来って、すごいかも。次回作も期待大です。