駄文徒然日記

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『“文学少女”と慟哭の巡礼者』 野村美月

心葉と美羽の話、完結編って感じでしょうか。
えぐるような痛みをばらまいて、なんとか終局を迎えました。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
もうすぐ遠子は卒業する。それを寂しく思う一方で、ななせとは初詣に行ったりと、ほんの少し距離を縮める心葉。だが、突然ななせが入院したと聞き、見舞いに行った心葉は、片時も忘れたことのなかったひとりの少女と再会する!過去と変わらず微笑む少女。しかし彼女を中心として、心葉と周囲の人達との絆は大きく軋み始める。一体何が真実なのか。彼女は何を願っているのか―。“文学少女”が“想像”する、少女の本当の想いとは!?待望の第5弾。

(色々ネタばれしてます。未読の方は読まないようにしてくださいね。)
 
一番胸に響いたのは、美羽の「ゴミ箱にしないで」という叫び。狂気にかられるまで傷ついた少女の奥底の声。
母からも祖母からも、さらには悪意はなくても、心葉からまでも追い詰められていた美羽。
美羽は理想に凝り固まりすぎてたのかな?「飛び降り」なんて破滅的な決着のつけ方を見て、そう思う。
ただ二度も自殺しようとして助かってるという不思議。
実は「生」への執着も人一倍強かったのかな。あの復讐劇を見ても、執着心が並みじゃないものね(苦笑)
そんな美羽を筆頭に、壊れた方々が集まりますね(^_^;)
感覚が歪んでて、発言がアブナイ流人くん、復讐に燃える美羽になぜか惹かれる芥川君、
純粋過ぎてなんだかボロボロになっちゃった心葉くん、
まともなはずなのに、女な部分を目いっぱい引き出されて、昼ドラやっちゃうななせちゃん、
まともじゃないという自覚を背負いきれない千愛ちゃん。
そしてその壊れた方たちが、ドロドロボロボロになったとこに登場する、
存在がまともじゃないけど、みんなを真っ当な道へ引っ張ってくれる頼れる先輩、遠子先輩!!
登場シーンは光り輝いて見えます!(はい、遠子先輩贔屓です~)
 
一人透明な存在の遠子先輩が語るところが、いつものごとく一番好きなシーンです。
報われない中でも、理想を追い続けた宮沢賢治
その物語は哀しくも、透明で、それはきっと賢治の理想を掬いあげたものだから。
「なりたい自分」をあんなに明確に描ける、賢治の理想を描く力は半端じゃないです。
自分の置かれた状況に嘆かないで、そこから抜け出すためにも理想を描き、求めることの必要性を、
遠子先輩は優しく説いてくれます。そしてこの物語を救済してくれるんですね。
 
このお話でちょっと心残りは、千愛ちゃん。
屋上で心中しようとした二人を止めに入る千愛ちゃんのシーンが、私は一番泣けたのだけど、
あとでその悲痛な叫びの本当の理由がわかってちょっとがっかり。
そこまでしないとダメだったんだね、やっぱり…(涙)
一巻で本当には救済されてなかったものね。
今回の事で、「ふつうの人」に近づいていけるといいね、と思います。
 
星は三つ。
ちょっと狂気にやられた人々の言動が共感しづらくて、ちょっとマイナス…。やっぱ年かなぁ…(^_^;)
ラノベって、みんなこんな感じですよねぇ。
中でも取り上げられてる『春琴抄』もなかなか共感できなかったんですよね。
これを理解できるような純粋さがないとラノベは読みづらいのかな?
 
余談。読み始める前、冒頭についてるカラー口絵を眺めていて、
心葉と美羽のハラハラのページをめくった次の、遠子先輩を見て噴きました。いや、たまんらんす、これ。