駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『獣の奏者 外伝 刹那』 上橋菜穂子

う~ん、どうなんでしょう??これ。
本編と同じノリで読もうとしたのがいけなかったのかな?
どうにもしっくりこなかったです…(>_<)
でも評判はとてもいいし、こんな不満抱いてるのって私くらいなんだろうな…。
 
苛酷な選択ばかり迫られるこの世界で、
誰かにもたれることなく、凛々しく生きる彼らは非常に魅力的に思えたのですが、
今回のように恋愛が物語の中心になると、なんとも色気がない…。
エサルもエリンもイアルも、もの分かりよすぎでしょ~。
こういう苛酷な設定だと、もっと見苦しいのが恋愛じゃないのかなぁ?
イアルは、本編のエリンと真逆をいくような後ろ向きでびっくりしたし…。
(まあ、彼の境遇を考えれば仕方ないですが)
色々予想外な感じでした…。
 
<内容紹介>
エリンとイアルの同棲時代、師エサルの若き日の苦い恋、息子ジェシのあどけない一瞬……。
本編では明かされなかった空白の11年間にはこんな時が流れていた!
1 エリンとイアルの同棲・結婚時代を書いた「刹那」
2 エサルが若かりし頃の苦い恋を思い返す「秘め事」
3 エリンの息子ジェシの成長を垣間見る「はじめての…」

ではそれぞれの感想を少し…。
 
「刹那」
イアルの側から描かれるエリンとの恋。
イアルは過去にもエリンとの未来にも暗い思いを抱えてるんですね。
囚われて吹っ切れない。
人を殺してきた立場ゆえ仕方のないことなんですけどね。
そうやっていろんな思考に囚われて動けないでいるイアルに対して、エリンは男前ですよね…(^_^;)さすが。
恋愛の主導権はエリンだったかー。
なんかそうやってみるとイアルがヒロインに見えて、
エリンはちょっと俺様な彼氏のようで面白いな、なんて思いながら読んでました(笑)
この物語でエリンの出産シーンが描かれます。
ドラマでは出産と言えば感動のシーンだし、難産を扱ったって、
生まれた瞬間は希望が見える演出なものだと思ってましたが、この出産シーンはどこかグロさがあります。
こんな風に出産を描くのは、私は初めて見ました。
それは子どもに希望を見出せないイアル視点だからなのでしょう。
エリンの視点で描かれてたら、きっと辛い中にも光が見えるようなお産だったろうに、と思います。
本当に対照的な二人なのだなー。
空白の11年を描くこの物語は、私が期待していたような、幸せを描いたものでありませんでした。
空洞だったイアルの中に、手放しで幸せになれない「家族」という重荷が流れ込んでくる話で、
それはイアルの望んでいたことではなかったかもしれない。
だけど、どこへともなく漂っていた彼を、この世にがっちりつなぎとめる重しになってくれたのだと思います。
彼はこの後長い時間をかけて、この出会いが自分に必要なものであったと知っていくのだろうな、と思いました。
 
「秘め事」
男前なエリンに比べて、とても女性的なエサルが対照的で面白いなと思いました。
相手に問いただすことなく、相手の行為からその意図を自分解釈してしまう流れが、
すごく女性臭いなーと思いました。
女性の恋愛って、一人で悩んで、自分で勝手に答えを出すんですよね~。
その割には、エサルは身分違いという立場や、貴族という立場をきちんと弁えてるんですよね…(^_^;)
女性の恋愛モノなら、そういった障害がさらに恋愛を激しく燃えさせるものになりそうなのに、
そこの点はいやに冷静で堅いんだなーなんて思いながら、読んでました。
ユアンについては詳しく描かれてないので、どんな風に思ってたか分からずじまいですけど、
エサル以上に立場に縛られていた彼は、誰かそれをぶち壊してくれるのを待っていたのかなーなんて思います。
私が恋愛経験が乏しいせいか(^_^;)、あまり共感できないまま読んでしまいました…。
人生経験を積んだらもっと理解できるのかな?
 
「はじめての…」
本当に短いお話。
でも「刹那」では描かれなかったイアルとエリンの純粋な幸せな場面で、救いのようなお話でした。
小さい子どもは、無条件に「幸せ」を感じさせてくれるなーと思います(^^)

さて、この本って、図書館では児童書の棚に置かれてるんですよね。
一応「獣の奏者」というタイトルが、児童書扱いになってるからと思うんですが。(青い鳥文庫でも出てるし)
それなのに、そのタイトルでこういう話書いちゃうのってどうなのかなぁ?
上橋さんはあとがきで、「獣の奏者」は児童文学ではない、とおっしゃってますが、
子供向けのアニメにもなったことだし、世間一般では「児童書」にカテゴライズされがちなこのシリーズで、
ここまで大人向けな話は正直書いてほしくなかったなーと思います…。
勝手な意見なんですが…。
 
星は三つ。
上橋さんらしい、重厚な深みのあるお話だったんですが、
本編とあまりに色が違いすぎて、私には受け入れにくかったです…(>_<)