駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『オーダーメイド殺人クラブ』 辻村深月

これ読んで、『桐島、部活やめるってよ』を思い出しました。
ヒエラルキーとか出てきたからかな。
私の時は、そんな言葉で表現しなかったけど、今時の中学生たちは自分たちのことそう自覚してるのかなー?
だとすると、すっごく残酷だ。
もちろん昔も階級のようなものはあったけど、枠組みがない分流動的だったし、曖昧だったと思う。
そして自覚も薄かった。
だけど言葉で定義してしまうと、はっきりと枠組みができちゃって、
そういうレッテルと自覚が嫌になるくらい明確になりそうだと思う。
しかも中学時代だと、それが友人間で露骨に出ちゃうんですね…。
 
<内容紹介>
中学二年のふたりが計画する「悲劇」の行方
親の無理解、友人との関係に閉塞感を抱く「リア充」少女の小林アン。普通の中学生とは違う「特別な存在」となるために、同級生の「昆虫系」男子、徳川に自分が被害者となる殺人事件を依頼する。
 
中学生時代。身を置く世界が狭すぎて、簡単に全て分かった気になってしまう。
そして全て自分の思うままに操れる気がしたり、簡単に人を見下したり、すぐに絶望したり…
大人じゃない、だけど子どもでもない様々な感情がもつれにもつれてる様は、読んでても息苦しくなる。
分かってるようでわかってない、そのもどかしさ。
成長過程には、こんな苦しい時期があったんだなぁ。
喉元過ぎれば…なタイプの人間なので、すっかり忘れちゃってたけど、
読んでてこんなに苦しくなるのなら、私もきっと同じような葛藤をしたのでしょうね。
 
クラスで目立って周りからはみ出るのはいや、周りと一緒の感覚で過ごしたい。
他人から見て、浮いてるように見られたくない。そう思いながら、自分だけは特別だと思いたい、という矛盾。
大人のように周りに合わせながらも、子どもみたいに自分のことを一番に見てもらいたい。
中学生という中途半端な時期にだからこそ起こりうる矛盾なのでしょうね。
大人になっちゃったら、「特別」なんて諦めてるからなぁ…それはそれで、切ないものですね…。
 
中学時代…学校に行きたくない日はあったけど、死にたくなったことはありませんでした。
(幸い家庭には問題がなかったので、きっと逃げ場所になってたんでしょうねぇ。)
だからアンちゃんの言ってることがなかなか理解できなかったんですね。
でも、読んでいくうちに、若い子の抱く「死」のイメージがちょっと分かった気がしました。
「死」を覚悟したら、明日の学校での立場なんてどうでもいいじゃないと、
読みながらどうしても違和感を感じていたのですが、違うんですね。

中学生にとっては、「今」が一番重要なんですね。
その大事な「今」がどうにもうまく行かなくなったり、立ちまわるのがわずらわしくなると、
こんなところに身を置いていたくない、全く違う世界に行ってしまいたいと思ってしまう。
それこそ一からやり直すリセットを押すような感覚で。
それはファンタジーの世界でも、SFの世界でも、なんでもいいのだけれど、
一番現実的で身近なのが「死の世界」なわけです。
社会で疲れた大人が、最後の逃げ場として「死」を選択するのとは、道理で重みが違うわけです。
作中の二人は「死」に対して本当に真剣だけれど、読んでる側にはどうしても甘く見えてしまう。
だけど「別世界」と認識してるのなら、憧れを抱いたりするのも分かるかもと思えました。
 
色々めんどくさい中学生というのを、本当にイタイくらいリアルに辻村さんが描いていると思います。
そしてその面倒な枠組みが外されるラストシーン。
「余生」と表現したその言葉は、まさにぴたりときました。
そうかも。大人である今、色々諦めちゃって、そこそこでいいやと楽しちゃってる。
中学生を見て青いなーなんて思うけど、眩しくも見える。
それは全力で精一杯生きてるからなんでしょうね。(色んな曲がった方向だとしても)
ああ、私ももうちょっと無茶やんなきゃいけないなー(>_<)
 
星は四つ。途中、冗長ではあったけど、それでも結末が気になって、ハマりこんで読んじゃいました。