駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『ジェノサイド』 高野和明

ぐあー、面白かった!!
私がSFものにあまり触れないせいかもしれませんが、
展開が、軽く想像の枠を超えていくのが、すごく刺激的でした!
ハリウッド映画を見てるようなスピーディーな展開、現実と重ねて見てしまいそうなリアリティ、
そしてすごくエンターテイメントに徹していて、どっぷりはまりこんで読みました。
軍事物だったり、化学物だったりする話で、馴染みのない分野の専門用語がたくさん出てくるんですが、
その割にはすごく読みやすかったと思います。
まあどれほど理解できたかは不明ですが(苦笑)、そこを理解できなくても面白さを損なうことないんですよね。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。
 
全然違う舞台での二本のストーリーを追いかけながら読み進めます。
この二つの話がメインになって物語を引っ張って行ってくれるのですが、
その中に、考えさせられるエッセンスがたくさん挟まれていて、
ストーリーを追いながらも、自分の内側と対話する部分も多くありました。
頭の思考があちこちに飛びまわりながら読書する感じなのですが、
その密度の濃さはまさに読書の醍醐味といわんばかりで、この作品の充実ぶりに圧倒され、興奮しました。
 
大きなストーリーを追いながらも、「ジェノサイド(大量虐殺)」について端々で語られ、
その現実、その心理などをいろんな面から描いているのが興味深かったです。
何らかによって枠が作られ、集団の中に線が引かれると、敵と味方が生じ、「虐殺」へと導かれるわけです。
それも少数の人間の決定が大虐殺への引き金になるんですよね…。
私たちの身は実に危うい立場にあるということを思い知らされました。
 
あと、報道の責任の重さを感じました。「知らされない」のは「ない」ことと同じになるという恐ろしさ。
そして報道されることは、基本「知られても大丈夫」なことであり、
本当に深刻な問題は知らされないのであるという恐怖を感じました。
今までもそういうものだと思っていたけど、そうやって看過出来る問題ではないんですよね、本当は。
私たちは流される情報をただ受けとるのではなく、
情報に対して、もっと自分で考え、積極的に収集せねばならないのでしょうね。
 
そして先日読んだ『永遠のゼロ』で思い知らされた、「知らないことは罪である」ということを再び痛感しました。
コンゴでの「アフリカ大戦」という世界を巻き込んだ紛争について、
全然知らなくてその非道さにショックを受けました。
 
この本を読んで、ついそんなこんなを考えたりしたわけですが、
そういう何かを考えさせるというよりは、とにかくエンターテイメントに終始した作品で、
いろんな思わせぶりな要素をチラつかせつつ、自分の身に迫るような現実的な恐怖をしのばせつつ、
物語は疾走していくのです。これは是非是非体験していただきたい。
ですので、内容にはあまり触れないでおきます。
 
ただ終盤がちょっとついていけなかったかな。
最後あれだけのことができるなら、○○や○○にあんなに苦労する必要があったのかなぁと思えちゃって。
きっと戦略的にとか、今後の交渉のためだとかあるんでしょうけど、
ちょっと私の理解が及ばなかったです…(涙)
 
というわけで星は四つ。(すみません(>_<))
でも五つ星級の大作だと思います!
 
余談。作中の「パピー」に噴いてしまいました(^_^;)
パピヨンのパピーって言ってるけど、パパのパピーにしか思えなくて…。
もっと違う名前にしなよーと思ってしまった(笑)