駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『今朝の春─みをつくし料理帖─』 髙田郁

みをつくし料理帖」シリーズ、4作目です。
前作ではのんびりと穏やかだったのですが、今回はこのシリーズにしては振り幅が大きくて、
新たな展開を迎えるのかなーという感じでした。
澪も身辺が揺れに揺れて、さすが「雲外蒼天」の相だなぁと改めて思わされました。
今までは、出来すぎた「いいお話」だったまろやかな味が、
今回ぴりりと辛みのあるわさびをきかせたような味付けになった感じですね。
誰しも持つ黒い部分を描くことで物語に今までにない味を持たせつつ、
だけど収まるところに収まっていく安心感はちゃんと残してくれています。
芯の部分はぶれずに変化を見せてくれる。やはり安定したシリーズだなぁ。
 
<内容紹介>(裏表紙より)
月に三度の『三方よしの日』、つる家では澪と助っ人の又次が作る料理が評判を呼び、繁盛していた。そんなある日、伊勢屋の美緒に大奥奉公の話が持ち上がり、澪は包丁使いの指南役を任されて――(第一話『花嫁御寮』)。戯作者清右衛門が吉原のあさひ太夫を題材に戯作を書くことになった。少しずつ明らかになってゆくあさひ太夫こと野江の過去とは――(第二話『友待つ雪』)。おりょうの旦那伊左三に浮気の疑惑が!? つる家の面々を巻き込んだ事の真相とは――(第三話『寒紅』)。登龍楼との料理の競い合いを行うこととなったつる家。澪が生み出す渾身の料理は――(第四話『今朝の春』)。全四話を収録した大好評シリーズ第四弾!
 
何と言っても小松原様の存在です。
ネタばれになるので、詳しくは書きませんが、今回も出番少なめな割に、判明する事実は大きくて、
この先どうなっていくのか非常に気になる展開になってきました。
そして野江ちゃんの過去話もちょっと明らかになりました。そして野江ちゃんがらみで、
澪のこの先に向けての大きな道筋が立てられて、明確なスタートラインが見えてきた感じです。
 
(これ以降は少しネタばれありです(^^ゞこれからこの本を読まれる方は読み飛ばしてくださいね)

二巻で「恋」の話が仄めかされて、今回の巻でいよいよ本筋に絡んできたように思います。
美緒ちゃんの健気でもストレートな片想い、又次さんの秘めつつも激しい想い、
おりょう夫妻のすれ違いの愛情など、様々な愛の形が示されましたが、
澪はそれらを見ながら、何かを学んでいくのでしょうね。
(「寒紅」の話は切なかったです…。みんなの想いの行き場が少しずつずれただけで、
悲劇に陥いることにもなるんですね…) 
そして自分の内に起こる変化。それをどうのように受け止めていくのかな?
とりあえずの決意は固めたけれど、思い通りに行かないのが恋ですものね。
これからも色々な浮き沈みがあるのだろうな。
ただ二巻あたりでは、澪の恋に源斉先生も絡んでくるかと思ったんですけどね、
今回はあまり見せ場なく、このままだと美緒ちゃんの方なのかな?という感じ。
いや、このシリーズで複雑な恋愛模様を見たいわけではないんですが(^_^;)、
あまりあっさり源斉先生が引っ込んじゃったので、拍子抜けな感じに思えちゃったんですよね。

と色々、澪の恋の行方も気になるのだけれど、このシリーズはやはり料理がメインであってほしいです。
恋の話に重きがいかないよう、今みたいなバランスでじっくり進めていってもらいたいですね(^^)
 
星は四つ。読み終えて、表紙を見るとちょっと切ない気持になりました。きゅっと胸を掴まれるような。