駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『県庁おもてなし課』 有川浩

苦戦しまくった翻訳もののあとの、有川作品はなんと読みやすいことか…(笑)
いつも一気読みしちゃう有川作品ですが、今回はいつもより更に軽くページをめくれた気がしました(^^ゞ
高知の方言で台詞が書かれてるのですが、
大河ドラマ龍馬伝」を見てたせいか、あまり苦労せずに読めました。
でも慣れない人は読みにくかったかも?
 
面白かったですねー。
これまでなあなあで済まされていた部分に手痛いメスを入れる様は、
小劇団を扱った『シアター!』のようであり、
作者本人とシンクロする様は『ストーリーセラー』のようで、それらを足して二で割った感じの本でした。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
地方には、光がある―物語が元気にする、町、人、恋。とある県庁に突如生まれた新部署“おもてなし課”。観光立県を目指すべく、若手職員の掛水は、振興企画の一環として、地元出身の人気作家に観光特使就任を打診するが…。「バカか、あんたらは」。いきなり浴びせかけられる言葉に掛水は思い悩む―いったい何がダメなんだ!?掛水とおもてなし課の、地方活性化にかける苦しくも輝かしい日々が始まった。
 
 
作者本人も「ギッタギタ」と言われる、おもてなし課へのつっこみは、
もっともな意見も多く、役所関係の方は耳の痛い部分もあったのでは、と思います。
もちろん、この本で言ってることがすべて正しいわけではなくて、
役所は役所で、「公的立場」というがんじがらめな立場があって、
民間のような自由が利かない部分もありますから、色々言い分もあることでしょう。
(この作品でもその「公平」という部分に少しだけ触れられてましたけどね)
 
ただ今回、有川さんのような影響力がある作家さんがこういった作品を出したということは、
大きな意味があるなーと思います。
多少意見の偏りがある気もするけれど、エンタメ要素たっぷりでとても読みやすくて、わかりやすい。
行政や観光に関して書かれた本はたくさんあるでしょうけど、
これだけの部数読ませる作品はなかなかないでしょう。
こういった問題は数多くの人が意識しないと変わらないことですからね。
この作品を叩き台にして、行政サービスの提供者、利用者の言い分が持ち上がって、
ともに改革意識が高まればいいですよね。
この作品の言ってることがすべて正しいわけではないでしょうけど、
変化が必要なのは間違いないと思いますから。
 
役場関係に勤めてる知人から聞いた話ですが、職場の上司が町長からこの本を読むように勧められたそう。
「うわー、ちゃんと活用されてるよ~」とちょっと嬉しく思いました。
そうやってたくさんの人の意識が変わっていくといいですよね。
 
ちょっとひっかかったのは、作家さんがもろシンクロしちゃうところ。
『ストーリーセラー』でもダメだったんですよね…(-_-)
体験談をもとにしてるから非常にリアルで、読ませるわけですけど、
作品の中に作家の姿がもろに出すぎると、私は話に入っていきづらくなっちゃうんですよー(^_^;)
この作品ももうドキュメントのようでしたからねー。
せめて作家役が他の文筆業だったらよかったのにとか思っちゃいました。
ちょっとそこのとこが苦手でしたね。
 
あと、恋愛要素も少しあるんですが、二組目の話は必要だったのかなぁ?と思いました。
おもてなし課で共に働く男女間に恋愛要素のおまけがあるのは、まぁありだとしても、
もう一組のいざこざはストーリー上必要だったのかな?
この二人の話のために、ある人が悪者にされちゃった感があるんですけど…(^_^;)
 
でもとても楽しめて、ためになる本だと思いました(^^)
星は四つです。
 
余談。
先日、熊本の阿蘇に旅行に行ったのですけど、
そこで「阿蘇ゆるっと博」のポスターが貼られていました。
阿蘇全体がパビリオン」とか、「阿蘇のすべてでおもてなし」とか書かれてて、
こういった動きが全国各地で始まってるのかなとうきうきした気分になりました。
(このゆるっと博は今年3月からの開催で、この本の影響というわけではないのでしょうけどね)
地方がもっともっと元気になるといいな。