駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『心星ひとつ─みをつくし料理帖─』 髙田郁

みをつくし料理帖」六作目になります。大好きなシリーズです。
やっぱり丁寧な文章が心地よいですねぇ。
(前回はマンネリな表現も多く見られたのですが、今回はちょっと工夫してますね・笑)
しかし物語は、大きく動きました。
それまでに色々仄めかしてきたので、「おお、いよいよ来たなー」という感じで彼らの選択を見つめていました。
早帆さんがきっかけを作るだろうことは前作でなんとなくわかりましたが、それにしても仕事が早いですね(^_^;)
それまで物語がのんびり進んできたので、早帆さんの一気に進める仕事っぷりに少々驚きました(笑)
 
<内容紹介>(出版社HPより)
酷暑を過ぎた葉月のある午後、翁屋の楼主伝右衛門がつる家を訪れた。伝右衛門の口から語られたのは、手を貸すので吉原にて天満一兆庵を再建しないか、との話だった。一方、登龍楼の采女宗馬からも、神田須田町の登龍楼を、居抜きで売るのでつる家として移って来ないか、との話が届いていた。登龍楼で奉公をしている、ふきの弟健坊もその店に移して構わないとの事に、それぞれが思い揺れていた。つる家の料理人として岐路に立たされた澪は、決断を迫られる事に――(第二話「天つ瑞風」より)。野江との再会、小松原との恋の行方は!? 「みをつくし料理帖」シリーズ史上もっとも大きな転機となる、待望の第六弾!!

物語は「起承転結」で言えば、「転」にあたるのでしょうね。
苦労もたくさんあったけれど、今まで澪たちが過ごしてきたつる家の心地よい空気。
それがあんまりに心地いいから、それを失うのが怖くて、
本当に大事な問題に目をつむってきたのかもしれません。
今回はそれときっちり向き合い、様々な覚悟を決めて、新たなところへ向かうための章と言えるかもしれません。

(この先、ちょっとネタばれ気味です(^_^;)お気をつけください…)
 
今作は、澪のこれからに大きく関わるお話が並びます。
「青葉闇」では、ある失態から、料理人としての本分を問われ、
「天つ瑞風」では、夢の一つである天満一兆庵再建の具体的なビジョンを問われ、
「時ならぬ花」では澪個人の人生の選択を問われ、
「心星ひとつ」で、全ての答えは自分の中に芽生えていることを知るのです。
 
物語が一つの理想的な形で進むのに、その脇で色々な不安要素が首をもたげます。
ああ、彼女の理想の未来は、現実的に叶えるとするなら、理想の道ではなかったのか、
と読みながら、読者もじわじわと悟っていくのです。

今回は、お店の件と早帆の申し出、二回も重要な選択を澪は迫られるわけですが、
途中どれも居心地悪さを感じます。
「物語が進展していくためには、私の中で収まりのいい形から抜け出ないといけないのよね」とちょっと、
作品が今まであった居場所から離れていく寂しさを感じたのですが、
結局彼女の選択は、私の心地よい場所に落ち着いてくれました。
やはり澪はそうでなくちゃ、と。
人間欲張りで、あれやこれやと思ってしまうけれど、本当に大切なことはきっとすごくシンプル。
色んなしがらみで混乱してしまうけど、自分の中の「心星」を見失ってはいけないんだな。
 
相変わらずりうさんのご指南は胸に来ますし、野江ちゃんは凛としてます。
美緒ちゃんも少し出てきて成長した姿を見せてくれました。
清衛門さん(これは馬琴先生ですかねぇ?)は、変わらず手厳しい。
いつも口が悪いですけど、やはり芯は通ってらっしゃる!
そして源斉先生はひたすら「忍」の一文字ですなぁ。切ないです~><
さて、源斉先生が小松原様の対抗馬になるにはもうちょっと押しが足りない気もするけれど、
これから巻き返しと行くのか?続きが気になります。
 
星は四つです(^^)