駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『困ってるひと』 大野更紗

ノンフィクション系をほとんど読まない私が、珍しく借りてきたこの本。
新聞で見てなんとなく気になり、私でも読めそうな気がしたので選んでみました。
 
分かりやすく言えば、「闘病記」系の本です。(作者さんは否定してますけどね)
困難を乗り越える様なノンフィクション本は、普段なかなか手が伸びません。
というのも、「事実」が怖いから。
そこに書かれてることは「事実」で、揺るぎなく真っすぐに突き刺さってくるので、
読んでる私に逃げ場がない気がしてくるのです…。
フィクションならどんなひどいことでも、つらいことでも、「でもお話だからね」っていって、
なんとか受け流せるんですけど…。

これも書かれてある病状その他はほんとに衝撃的で、
そんな苦痛は耐えられない!と逃げ出したくなるような内容なわけですけど、
それが不思議と投げ出さず、ガンガン読めちゃうんです。
なぜならこれが、「三浦しをんさんが書かれてるのだろうか」と思ってしまうような文章だから。
「いやいや、そんなこと言ってる状況じゃないでしょうに」と思いつつ、
ネタのような文章に失礼ながらぷっと吹きだしながら、するする読めちゃうんですよー。
エッセイもあまり読まない私なので、例えが微妙かもしれませんが…(^_^;)

<内容紹介>(Amazonサイトより)
難病女子による、画期的エンタメ闘病記!
ビルマ難民を研究していた大学院生女子が、ある日とつぜん原因不明の難病を発症。自らが「難民」となり、日本社会をサバイブするはめになる。
知性とユーモアがほとばしる、命がけエッセイ!!
 
なんたって、「エンタメ闘病記」ですからね…(^_^;)
例えば、冒頭を抜き出してみますと、
 
ビルマ女子、イモムシ化する』
「うごけない…」
 二〇〇八年、秋。わたしは、当時友人とシェアして暮らしていた小平市の、見た目いまにも吹っ飛びそうな、まるきり昭和にタイムスリップしたかのような平長屋の板床の上、うら若き女子大学院生の寝具としてはファンシーさもロマンチックさも皆無の、ちょっとカビくさい(だって干す気力がなかったから…)煎餅布団にくるまって、うめいていた。……

と、こんな調子なわけですよ。
どうして想像を絶するような過酷な体験談を、こんな調子で書けちゃうのか、最初疑問に思ったのだけど、
読み進めていくうちになんとなくわかった気がしました。
壮絶を超える壮絶、これはまともに書いたらとても読めるものではなくなってしまう。
どん底のさらにどん底を知ってる読者が一体、どれほどいるでしょうか。
あまりに壮絶すぎる体験談は、共感したり、同情したりできるレベルじゃないわけです。
ちょっと茶化したように見える文章も、他者じゃない、本人が書く言葉だから、
なんとか私たちは受け入れられるんじゃないかな。
 
最初の方は、作者にとっては過去話になるからか、すごい体験も結構余裕持って書かれてるのですけど、
中盤すぎた頃から、リアルタイムに近づいてくるからか、
調子はあまり変わらずユーモアに書かれてるんですけど、
本音やらなんやらかんやらが漏れ出してきて、読んでてちょっと辛くなる部分もあります。
でもそれこそが現実なんだよなー。こんな状況で平気なわけないもの…。
 
福祉制度の実情や病院事情など、するすると読めながらも、大事なことにも触れられています。
前に読んだ有川浩さんの「県庁おもてなし課」の時も思ったんですが、
こういう社会の仕組みに対する不満や意見は、広く知られなくてはいけません。
だけど自分に縁がないとなかなか知ることがないのも現状だと思います。
少なくともぼーっと生きてる私には、全くあずかり知らぬところでした…(-_-)
 
こういった読みやすい、かなり変化球な闘病記ということで、
今までこのような本に縁のなかった私も手に取ったわけで、この本が出た意味は大きいなと思うのでした。

余談。
作中やたら連発される「エクストリーム」。恥ずかしながら意味がわかりませんでした…(^_^;)
 <エクストリーム (Extreme) は、「極限」「極度」「過激」などといった意味をもつ英語。>
だそうです。はやってる言葉なのかなぁ?