『中途半端な密室』 東川篤哉

東川さんの短編集です。デビュー作を含めた初期作品集五編。

ゆるーいユーモアに結構真面目に本格ミステリ、

と今と全く路線を変えてない東川さんのスタイルがここにあります。
このスタイル、ちゃんとずっと核なんだなぁと、これ読んでなんだか安心しました。
全然変わってないんだもの。
だけど、初期の方が割合落ち着いてて、一般読者にも読みやすくなってます（笑）
今の、逸れ過ぎる脱線とか、やりすぎるベタなギャグとか、妙な方向に突っ走るキャラたちとか、

ゆるさと脱力感がスケールアップ（笑）してるのが、また私のツボなんですけどね。

 

＜内容紹介＞（「BOOK」データベースより）
テニスコートで、ナイフで刺された男の死体が発見された。コートには内側から鍵が掛かり、周囲には高さ四メートルの金網が。犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げた!?そんなバカな!不可解な事件の真相を、名探偵・十川一人が鮮やかに解明する。(表題作)謎解きの楽しさとゆるーいユーモアがたっぷり詰め込まれた、デビュー作を含む初期傑作五編。

 

デビュー作、なんたってタイトルからして「中途半端な密室」ですからね。
内容見たらもっと真面目にやっても行けるトリックですよ。
なのにゆるさ溢れる「中途半端な密室」と称してるあたり、

最初から「真面目に不真面目をやる」という、ブレない方向性を感じますよね(^^）

 

作品は全て安楽椅子探偵もの。

そして一作目以外は、大学生コンビ、ミキオくんと敏ちゃんが主役になってます。

このコンビがなかなか楽しい。

その安楽椅子ぶりがいいんですよね。まるで他人事ないい加減ぶりと言いますか。

そのうち烏賊川市シリーズとかに乱入してきたりしませんかね。

 

星は三つ。東川ファンなら読んでおいて損はないです。
ちなみに一番好きだったのは「南の島の殺人」です。

こういうの思いつくのって（そしてミステリとしてやっちゃうのって）東川さんくらいしかいないんじゃない？？