駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『PK』 伊坂幸太郎

えっと、読み終えて混乱中です(^_^;)
時系列があちこち飛ぶ感じで、同じような話が何度も登場して絡んでくるから
整理してみようと思ったんですが…行き詰ってしまいました。
これはきれいにリンクさせてはいないのかな?
 
未読の方ごめんなさい。以下、ネタばれ全開で感想を書きます~。
 
 

作家の子どもが、後の大臣だと思ったんですが、
「PK」で描かれる作家サイドの話には、ネットや携帯ゲームなどまさに現代が舞台で描かれてるんですよね。
大臣は2012年だかで57歳とか言ってるし、リンクしてるようでしていないのかな?と混乱してしまいました。
つまりはいくつも分岐していく話だから、あれもこれも繋がってるようで繋がってないってことなのかなぁ?
というわけで、色々メモ書いて整理してたんですが、リンク整理は諦めます~(^_^;)
 
「PK」
この話が一番好きでした。
「魔王」に衝撃を受けた私としては、この作品が一番「魔王」を彷彿とさせる気がしたんですね。
ひたひたと迫ってくるような不気味さがあって好みでした。
「勇気の量を試される」と作中で言います。
正しいと思うことをしようと奮起するのが「勇気」なんですよね。
悪いことだと思ってたら、それはきっと「覚悟」になると思うから。
正しいと思って、やるべきだと思ってする行動なのに、いろいろなものに妨げられて、
強い「勇気」を持たないと、行動に移せない。
それは後ろめたさや、自分の間違いを認めることや、行動の後の心配だったりします。
主義を問われる場面で自分は「勇気」を持てるか?
さまざまな雑音を投げ打って、正しいと信じる道を表明できるか、この中で何度も何度も問われます。
 
チャップリンの言葉を引用して「ひとりひとりはいい人たちだけれど、集団になると頭のない怪物だ」と言います。
そしてアドラーの言葉で、「臆病は伝染する。勇気も伝染する」と。
何かをなさないこと、主張を持たず周りの人と同じ行動をとること、それは臆病が引き起こすものでしょう。
だとすれば集団はとかく臆病な意志を持って、考えなしの行動をしてしまいがちだということです。
だけど誰かが勇気を持って正しいと思う行動に移せば、
それは伝染し、集団は個々に意思を持ち、正しいことをなそうとするのものにもなりえるわけです。
サッカーのたった一つの「PK」が勇気を伝染させて、
やがて世界にミラクルを起こす「PK(超能力)」になるかもしれませんよね。
 
「超人」
リンク整理は諦めたといいつつ、無理やり引っ張ってくると、
こちらは「密使」が届かなかった過去になるんでしょうかね。
作家の浮気はばれて、大臣と秘書の雰囲気も「PK」の時とは違います。
昔浮気がばれた父を見て大臣は「落ち着いていればどうにかなるものだ、と学んだ」と言ってますからね(笑)
「PK」では勇気について語っていたけれど、ではその信じるべき「正しさ」の判断はどうするのか。
ここでは「正しい」ということが問題になります。
本田青年は究極の選択に頭を抱えます。
「虐殺」か「逆虐殺」か。大人数を殺すとされる人物を先に始末する。結果的には正しそうにも思えますが、
まだ何もしてない人を殺すという罪悪があります。自分はどうすべきか…。
でも、それしか道がないわけではなかった。二者択一と思われた選択肢はそうではなかったのです。
ケネディの言葉を引用して、「間違いは、それを正すのを拒むまで間違いとならない」と言っているように、
仮に間違った選択肢を選んだとしても、それを挽回する機会は与えられているはず。
本田青年を例にすると究極すぎるけど(^_^;)、勇気を持って行動したのに、それでも判断を誤ることがある。
だけど「過ちを認めることからはじまる」こともあるのです。
それだって、勇気を持って正しいことをなすという行動に繋がるわけですよね。
 
「密使」
この話は、上二つをまとめる様な、ちょっとコミカルな要素も入れた話ですね。
時代には、個人では抗えない大きな流れがあり、だけど、個々の判断でなされる小さな行為が、
ドミノ倒しのようにつながって、それが時代の分岐点だったりする、とこの本では言ってるわけですけども。
でも、「密使」に出てくるような機関で、様々な事象の影響を隅々まで調べたとして、完全に把握はできない。
ゴキブリを送り込んだとしても、個人に脅しをかけて行動を強制させようとしても、
どうしても計算通りにはいかない。
(と、「密使」で結果は描かれないけど、上二つの話を読んでそう思うんですけどね)
上からの押し付けじゃ、そう上手くは行きにくいんでしょう。
だけど、将来の危機を共に乗り越えようとする、皆が望む目標があれば、「救い」はあるのかな、と思えます。
世界を救うのに、自己犠牲じゃなく、一人の「勇気ある」行動が成功へと導いてくれるラストはいいですよね。
 
伊坂さんは、過去の作品の中で、「頭のない怪物」を危惧して、幾度も警告を投げています。
「自ら考え、行動する力を」と。
今回はそのメッセージを特に明確に表してきたな、と思いました。
伊坂さん、本当にこの国の未来を心配してるのだろうなぁ。
(なんて他人事のように言ってはいけませんが…(^_^;))
 
星は三つ。
話が混乱した、と言うのもあるんですけど、いつもの伊坂さんらしい軽快な語り口調が
ちょっと落ち着いてるようにも感じられて、少し物足りなかったかな。
感想もなんかまとまらず、ぐちゃぐちゃになってしまいましたね…(^_^;)反省。