駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『朱鳥の陵』 坂東眞砂子

またぎりぎり返却日まで読んでて、手元に本がない状態です…(^_^;)
あやふやな感想になるかと思いますが、ご了承くださいませ~。
 
昔、藤川桂介さんの「宇宙皇子」にハマり、里中満智子さんの「天上の虹」を愛読していた私としては、
飛鳥時代は大好きな舞台です。
これは持統天皇の時代の物語で、坂東さんの本は初めてだったんですが、がっつりハマりこんで読みました。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
飛鳥時代。人々の夢を解くことを生業とする白妙は、見知らぬ少女讃良の心を覗き込む。それは最高権力者である持統天皇の過去だった。やがて白妙は、恐るべき女帝の秘密へと近づいていく。古代日本最強の女帝、持統天皇の呪術的世界に迫る、歴史長編小説。
 
見慣れない、古めかしい呼び名のルビがいたるところに振られていて、ページを開いた時は少々慄くものの、
紡がれる文章は、万葉時代の荒々しく、生々しい雰囲気がすごくよく出てて、すぐさま引き込まれました。
この時代の神と人のごたまぜな感じが、平安時代の絵巻を見る様なよそよそしさじゃない、
人間臭さが感じられて好きなんですよね。(平安時代はまた別の魅力があって好きなんですけどね)
 
讃良皇女(持統天皇)の夢に白妙が入り込むことで、物語が二重構造になっています。
夢の中で、今は太上天皇になっている讃良の過去話が紡がれます。
それだけでも十分面白いのですが、その夢を覗き見る白妙が夢解きをするというミステリな部分もあり、
史実を知ってる読者でも先が気になる展開になっています。
夢を覗く白妙の存在に、夢の中の讃良が段々気づいてくるんですよー。
読者として一緒になって覗きこんでる自分を白妙に重ねて、
讃良から向けられる視線に「見つかってしまった?!」と一緒にハラハラしました><
主人公が白妙と言う名前なので、持統天皇の有名な「白妙」が出てくる歌が、
終盤使われるのだろうなとすぐ想像できたのですが、
実際出てきたときは「そんな意味を重ねてくるとはー><」と結構衝撃でした。
そこまでは予想できませんでしたよ~(^_^;)
 
この本ではなかなか怖い存在の讃良ですけど、やはりすごい人だなーと改めて見直しました。
この本での讃良は、感情と政治のバランスが絶妙なんですよね。
身近な人に執着心を持ちつつつも、切るときはスパッと切れる。その切り替えがとても見事。
だから讃良の心はどんどん荒んでくるのに、反対に都は次第に理想の形へとまとまっていくのです。
ある意味、国造りの犠牲者ともいえるんだろうなぁ。
それが必要と感じたら、こじつけでも理由づけしてどんなことでも実行できる。
その潔さは女性ならではだと思います。讃良は、女性の恐ろしい部分が顕著に表れた人と言えるかも。
男性は見せしめのために残酷なことをするけれども、女性は自分の意志だけで残酷なことをしでかす。
それはもう恐怖ですよ。物語の終盤はほんとぞくぞくきます…。
 
女性は子を自分の内に孕む性だからか、この讃良も、全てを受け入れ、閉じ込め、内包します。
新しく作られた京は全てを閉じ込め、夫の想いを呑み、息子を内に戻し込み、
さまざまな障害をも暗い中へと落とし込みました。
その周囲を呑みこむ大いなる内は、白妙をも引き寄せてしまったのでしょうか。
そしてそれらをすべて抱えたまま、燃えて灰になり、最後骨壷へと閉じ籠るのです。
 
私の大好きな大津皇子はあまり出番がなくて残念でしたが、次に好きな高市皇子が出番多くて嬉しかったです。
(幸せな役どころではないですが…(^_^;))
ただこの時代をよく知らない人には、人間関係を把握するのが困難かなーと思いました。
有名な人物でも耳慣れない別名で書かれてるし、いくつもの呼び名で呼ばれたりして、
ただでさえ入り組んでる人物関係がより分かりにくくなってると思います。
持統天皇の周りくらいでも、事前に予習しておくといいのかも。
この時代が好きな方には是非読んでいただきたいです(^^)おススメです。
 
星は四つ。好きな時代がとても興味深く描かれていて、非常に満足でした(^^)