駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『震える牛』 相場英雄

友人にすすめられて読んだ本。
面白かったです。続きが気になってサクサク読んじゃいました。
 
<内容紹介>(出版社公式HPより)
平成版『砂の器』誕生!
警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から二年が経ち未解決となっている「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。
初動捜査では、その手口から犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込んでいた。田川は事件現場周辺の目撃証言を徹底的に洗い直し、犯人が逃走する際ベンツに乗車したことを掴む。ベンツに乗れるような人間が、金ほしさにチェーンの居酒屋を襲うだろうか。同時に殺害されたのは、互いに面識のない仙台在住の獣医師と東京・大久保在住の産廃業者。田川は二人の繋がりを探るうち大手ショッピングセンターの地方進出、それに伴う地元商店街の苦境など、日本の構造変化が事件に大きく関連していることに気付く。
これは、本当にフィクションなのか?
日本の病巣、日本のタブーに斬り込んだ、衝撃のエンターテイメント大作!

面白かったんですけど、この『平成版「砂の器」』は煽りすぎですね(^^ゞそんな重厚な感じじゃないです。
私は図書館で借りたので帯も何もなく、そのまま読んだので楽しめましたが、
帯の煽り文句なんかを見て、期待して読むとがっかりしてしまうかも…(^_^;)
取り扱う題材は重いですが、読み物としては気軽に読む感じのエンタメ本です。
文章がちょっと合わなくて少し読みにくさもありましたが、
並行して進められる話をどう絡めていくのか気になって、どんどんページをめくっていけました。
 
エンタメ本と書きましたが、ジャンル分けが難しい作品だと思います。
全体の構成や文章の読みやすい軽さがエンタメだなと感じたんですが、
内容としては実在する企業等と重なっていて、
実際の生活の背景に潜んでいるかもしれないノンフィクション的な恐怖があります。
ミステリっぽい要素もあるんですが、それにしてはタイトルでネタばれしていて、
そんなに読者を驚かせようとする感じでもありません。
ただ詰め込まれる題材はてんこ盛りで、それらをうまくまとめて面白い読み物にしてるなーと思いました。
 
強盗事件に関わる刑事さんが必死に証言を集めて接点を探しますが、
読者にはその接点が何か、早々に分かってるんですよね。
ミステリとしては驚きがなくなるわけですけど、それはそれでちょっとした優越感に浸ることができて、
面白く読み進められました。
そしてこれは作者さんの強い問題提起を優先した結果なのかなーと思いました。
早々にネタばれしてもいいから、絡み合った複雑な利害関係をきちんと伝えたいと思ったのかな?
作品の完成度を高めることより、作者さんの、現代社会の危機感を伝えたいという思いの方が
強く感じられるような作品でした。
 
「日本のタブー」として書かれている内容(食品偽装問題等)を鵜呑みにするわけじゃないですが、
全くの虚構でもないだろうし、普段ノンフィクション系を読まない私なんかには、
こういう本で自分の生活を見直すきっかけができるのは大事なことだよな、と思いました。
「永遠のゼロ」のように、広く読まれるためにはこういう作品が必要だと思います。
 
星は四つ。
機会があれば、ぜひ読んでほしい本だと思います(^^)